だから人とあまりたくさんコミュニケーションを取るのが得意じゃないのかもしれません。そうすると整理しないといけないことがいっぱい増えてしまいますから。

三島 AKB48時代は尋常ではない数の人と接していましたね。

前田 若いときはそうやって生きてきました。大人になってからは、すごく狭くていいから深くかかわるのが一番いいなと思うようになりました。

 事務所から独立したのは29歳のときで、自分の仕事のやり方についていろいろな人と話して決めていこうとすると、迷いが出てしまう。何を軸にして信じるかというのは、人に聞くことではないなと思ったんです。

三島 では、これが嫌だなと思ったら、整理されているということですか。

前田 そうです。なんかモヤモヤしたまま、まあいいやで終わることができないんですよ。

三島 大事ですね。私は何人かの集団の中を目をつぶって床に8の字を描くように歩いてもらうというワークショップをやっていまして、すると、他人から離れているときのほうが体温が上昇する人と、他人の中にいるほうが上昇する人がいるんですよ。

 私は1人になったときのほうが体温が上がると思っていたんですけど、実際にこれをやってみたら、人の中で話しているほうが上がっていたんです。

 

子どもからは「大きな体温を感じる」

前田 私は大きな体温を感じる子どもがいるので、それで十分な感じがします。私は性格的に、本来あまり人といられるタイプじゃないと思うので、今、私に子どもがいるのって奇跡だよなって思います。

三島 なるほど、前田さんにとって、お子さんの存在はかなり大きいようですね。

前田 すごく大きいです。子どもを見ていると、客観的に自分を見ているような気になることがあります。たとえば、先ほども思ったんですが、うちの子も何歳なんだよとツッコみたくなることがあって、まるで50代のおじさんのような言葉遣いをするんです。

三島 お母さんと同じで、お子さんも戦前から生きているのかもしれない(笑)。前田さんは社会に出て働き始めるのが早かったので、達観しているのでしょうか。見てきた世界は、同世代の人たちの倍どころではないでしょうから。

2024.02.20(火)
文=こみねあつこ