この記事の連載

書店員 すず木さん[ブックライブ書店員]

Q1:夜ふかしマンガ大賞に推薦する作品は?

●『私がひとりで生きてくなんて』ハルノ晴/講談社

 短大卒業後、すぐに結婚して専業主婦になった愛菜は、人生の勝ち組だと思っていた。ところが、夫の突然の離婚宣言で幸せの絶頂からどん底へ転落してしまう……。

「『あなたがしてくれなくも』のハルノ晴先生の新作ですが、ぐいぐい読ませる展開に流石!! と唸ってしまいました。主人公の愛菜には微妙にイラッとなりつつも、なんだか応援したくなる絶妙さ加減が本当に凄い。読んでいて他人事と思えず、自身を投影してしまう人もいらっしゃるかもしれません。“離婚”“不倫”は不動の人気テーマですが、昨今の作品はそれでも新しさが光る作品が多いと思います。この作品も新たな“離婚マンガの星”となるのでは……と思っております」

●『気になってる人が男じゃなかった』新井すみこ/KADOKAWA

「女性同士の“恋愛”なのか“友情”なのか、この感情にあえて名前をつけたくない……! と思ってしまいました。とにかく、みつきとあやの関係が尊すぎる!! キャラクターも絵柄も出てくる音楽もカッコイイ! 最高です。夜ひとりでベッドのうえでグルングルン転がって『尊い~~!!』と悶絶しながら読んでいただけると思います。ちなみに私は足をバタつかせながら読みました」

●『霧尾ファンクラブ』地球のお魚ぽんちゃん/実業之日本社

「読んでいると片思いをしているときが一番楽しいときかもしれない……とさえ思えてきました。主人公ふたりのテンションが面白くてクセになります! 深夜のテンションで読むとより面白さが加速する気がします。疲れて帰ってきたときに心に効くマンガです」

Q2:人生で影響を受けたマンガは?

●『東京BABYLON』CLAMP/KADOKAWA

 東京を舞台に、陰陽師の少年・皇昴流が、日々多くの依頼を受けながら問題を解決していく物語。

「先生の言うことが絶対! 大人の言うことは正しい! と教えられがちな小学生時代に、“必ずしも大人の言うことは正しくないかもしれない”と疑惑を持つキッカケになった作品。物事を多角的に見るということを教えてくれたのもこの作品でした。おかげでかなり生意気な子どもになった気がします。(が、悔いなし! です)。いま読むとバブル時代を感じるシーンもありますが、物語のテーマとしては、いまも変わることなく楽しめますし、テーマとして現代にマッチしていると思います」

Q3:夜ふかしマンガの楽しみ方は?

「湯船に浸かりながら読むマンガが最高です。お風呂場なら泣いてもすぐ流せるから平気だし、気持ちよく鼻歌謳いながら読むのもアリ!! おともは香りのいい入浴剤と炭酸水。マンガで気持ちもリフレッシュできるし、半身浴で体もリフレッシュできちゃいます!」

Q4:いま、特に注目している作品は?

●『来世は他人がいい』小西明日翔/講談社

「連載開始から時間は経っていますが、新刊をずっと待っている作品です。とにかくイカレている霧島が格好よくて好きです。吉乃もなかなかにぶっ飛んでいて、普通ではないふたりがこれからどうなっていくのか見守るのが楽しみです。かなり危ないキャラクターも登場し、いろいろな謎が明らかになりそうな今後の展開に注目です!」

●『いつか死ぬなら絵を売ってから』ぱらり/秋田書店

「いままで絵を描くことをテーマとした作品はありましたが、こちらは一味違います。世界的名画がオークションで高額がつくのは納得できるしご存知の方も多いはず。ですが、現代に生きている画家の絵って、どうやって価値が決まるかご存知ですか? 今作はそこに切り込んだ作品で、アート×お金のマネーゲームというテーマは未だかつてない作品です」

Q5:いま、読み返したい名作は?

●『うしおととら』藤田和日郎/小学館

「SNSでの炎上に『どういうことなの!?』となったり、心が痛いさまざまなニュースが多かったりする昨今ですが、この作品を読んで、人と人(人だけではなく妖怪も)との繫がりの大切さや真っすぐ向き合う大切さを思い出したい。心の奥に眠っている熱さを呼び起こしたいです。泣けるマンガでもあるので泣きたいときにもおすすめ」

Q6:とにかく泣きたい夜におすすめの作品は?

●『どうせもう逃げられない』一井かずみ/小学館

「人がよすぎて損をすることが多いなほ。彼女が恋をしたのは、職場のデザイン事務所の代表である向坂。ですが、向坂には過去の恋で心身ともに重大な傷を負っていて……。ふたりの優しさが心にグッときます。好きだけど過去の傷のせいでうまくいかないところも泣けます。ひたすら傷ついて泣くなほの姿に読んでいるこちらも涙腺崩壊。一井先生が描く描写も美しくて、より涙を誘います!」

Q7:期待の新人作家とその作品は?

●『MADK』硯遼/プランタン出版

「“モツ(臓物)”と“悪魔”と“男子高校生”を略したのがMADKというタイトルの由来です。BL作品のなかでも、なかなか読む人を選ぶ……とは思いますが、ファンタジーとしてもかなり秀逸です。キャラクターのデザインもほかにはない独特の世界となっており、耽美でデカダンです! 人間同士の愛ではない、悪魔ならではのい愛が堪能できます」

書店員 すず木(しょてんいん・すずき)さん
ブックライブ書店員

年間読むマンガは2,000冊以上。総合電子書籍ストア ブックライブで働く10年以上のベテラン。新作マンガ紹介『月刊 書店員すず木』更新中。

2024.01.27(土)
文=大嶋律子(Giraffe)