開始当時、父親がアルコール依存症だった女性たちが多かったので、グループで語られる内容は、父にまつわるもの、父の記憶が多いだろうと想像していた。

 しかし10年近く実施してはっきりしたのは、彼女たちが一番苦しんでいたのは母との関係だったということだ。酔った父からの虐待はもちろん彼女たちの苦しい記憶だったが、その傍らで父の暴力を受け、不幸な姿を娘に晒し続けた母こそ、彼女たちにとって言語化しづらい存在だった。

 泣きながら言葉にならない、母のことを語るそばから深い罪悪感を覚える、といった参加者の姿に接しながら、私の中で「母」という存在、母娘の関係について関心が深まっていったのである。

※2008年の「母娘ブーム」や団塊世代の母たちの葛藤、息の詰まる母娘関係から抜け出す方法などについて書かれた全文は、『週刊文春WOMAN創刊5周年記念号』でお読みください。

のぶたさよこ/1946年岐阜県生まれ。お茶の水女子大学文教育学部哲学科卒業、同大学院修士課程家政学研究科児童学専攻修了。駒木野病院勤務、CIAP原宿相談室勤務を経て1995年原宿カウンセリングセンター設立、現在は顧問。

週刊文春WOMAN Vol.20 創刊5周年記念号(文春ムック)

定価 770円(税込)
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2024.01.28(日)
文=信田さよ子