オーバーアクションも得意

木ノ元 老いるというのは、悪いこともあれば良いこともあると。歳を取って良いなあと思ったのはどんなことですか?

哲代 ほかの人から見たら「腰が曲がってしんどいじゃろうなー」と思うだろうけれど、腰が曲がっとるからこそ、人より余計に休憩ができたりするんですよ(笑)。本当にちょっと心を入れ替えるだけでねえ、苦が楽になるんです。手の甲はしわくちゃでも手のひらはつるつるでしょ。それと同じように、「情けないのう」と思いよっても、よく考えてみたら「ええことじゃった」ってこともありますからね。できるだけ、ええほうに考えりゃええと思います。自分の頭じゃからな。

木ノ元 哲代さんは、いつも自分を励ましながら生きている人だなと、私たちは取材をしながら思っているんです。弱気の虫が出てきたときは、「悩みが出てこないくらい体を動かす」とおっしゃっていましたよね。

哲代 はいはい。体を動かして、よく食べて、よく寝て、よくしゃべってね。自分の体は自分でしかコントロールできんですもんね。

鈴中 晩御飯も、しんどくて昔みたいに何品も作れなくなっても、朝起きておいしいお味噌が作れたら、それだけでOKって自分を褒めて。

哲代 そうです。「ようできましたよ、いりこの出汁がよう出ております、おいしいですよ」って言っていただけばいいんです。自分で自分を褒めるんだから、たやすいですよ。

鈴中 できないことばかりに目を向けるんじゃなくて、哲代さんみたいに「あれができた」「これができた」と、できることを探していけばいいですかね。

哲代 そうですね。できたことを、自分で褒めてやる。小さいときは「自分で自分を褒めるのはバカだ」と言われよったんですが、今は「自分で自分を褒めることは良いことだ」と思いますね。他の人に褒めてもらうのは、なかなかできることじゃないですから。

木ノ元 哲代さんはいつも言葉に出しますよね。「ああおいしい」とか「これからおやつをいただきます」とか。その、気持ちが上がるように自分で自分に言って聞かせる独り言が、大きな声なんですよね(笑)。

哲代 ちょびっとのお菓子でも大声で言います(笑)。

鈴中 オーバーアクションも得意ですよね。

2024.01.03(水)
文=ライフスタイル出版部