そこから企画を決めるのに、まぁまぁ時間が掛かりました。
「この人だったら書けるかも」周囲の人がたくさん亡くなった笠置シヅ子
――企画ありきでスタートしたわけじゃなかったんですね。
足立 決まってる場合もあるかもしれないけど、今回は企画を決める段階から始めました。福岡さんから「まず、足立さんがやりたいと考えていることをどんどん出してください」と言われて。
――企画出しに関して、縛りみたいなものは。たとえば、「主人公は女性で」とか「戦前の日本をテーマに」とか。
足立 特になにも言われなかったので、いろいろ出しましたね。
女の子版『フォレスト・ガンプ』みたいな話とか、女子野球の話とか。朝ドラの主人公は女性っていう先入観があったので、女性が主人公のものを出しましたね。もちろん、NHKのほうからも企画をたくさん出してもらって。
――そのなかに笠置シヅ子の企画があったと。
足立 はい。笠置シヅ子さんの人生を要約したものが送られてきたんです。不勉強でお名前と『東京ブギウギ』くらいしか知らなかったんですけど、それを読んで「ああ、こんな人だったんだ」って。そこで興味がわいて「この人だったら、もしかしたら書けるかもしれない」と。
そこから自伝や評伝を読んだり、NHKが送ってくれた資料を読んだり、国会図書館に通っていろいろ調べていくうちに、すごくユーモラスな人だなと感じたんですよね。その人生で起きている出来事はかなり大変なんですけど、どこか飄々としているというか。
――人柄にビビッときた。
足立 人としての魅力とユーモアセンスと生命力の溢れ方に惹かれましたね。戦争があったのもありますけど、戦争以外の理由でも周囲の人がたくさん亡くなっているんです。「これ、普通の人だったら病んじゃうでしょ」ってレベルなんですけど、その乗り越え方に惹きつけられましたね。べつに乗り越えてるわけでもなく、いい感じでうやむやにしながら生きていく。その感じが好きだなと。
2023.12.14(木)
文=平田裕介