――朝ドラに対するイメージも、とくになにかあるわけでもなく?

足立 僕がこれまでに書いていたものとはまったく違う世界、といったイメージでしたね。あえて言うなら、清廉潔白で正しい世界といいますか。頑張る人、頑張れる人を描く世界で、僕はその真逆の人を描いてきたので。

 なので、率先して見ることもなかったです。朝ドラに限らずテレビドラマを実はあまり見ていなかったです。ただ、NHKでは単発ドラマの脚本もやっているし、去年は全10回の『拾われた男』というドラマをも書かせていただいたこともあって。ドラマに関しては、NHKで書くことが多くて、民放ではほとんど書いてなくて。それでも朝ドラに関しては未来永劫関わることはないと思っていましたから、数年前に初めて連絡あったときは本気でビックリしましたね。

 でも、まわりからは「意外と朝ドラに向いているんじゃないか」と言われることはあったんです。福岡さんとは違うNHKのプロデューサーや小説『春よ来い、マジで来い』を連載していた「キネマ旬報」の編集者の方に、「朝ドラで、家族や子供の話を書いたらいいんじゃないか」みたいなことを言われていて。
 
 キネ旬の方いわく、「朝ドラは、主人公の子供時代が絶対に出てくる。足立作品はいつも、子供がいきいきとしているし、女性の描かれ方も逞しく、いつも共感していたので、面白くなるんじゃないか」ってことでした。

 

――たしかに『14の夜』、『こどもしょくどう』(2019年)、『雑魚どもよ、大志を抱け!』(2023年)と、子供を描いた作品が多いですよね。福岡さんから電話が来て、すぐに返事されたのですか。

足立 いや、詳しく話すと、福岡さんの電話って留守電だったんですよ。「ちょっと頼みたいことがある」っていうメッセージが入っていて、妻は「たぶん、それって朝ドラのことだよ。朝ドラだったら、あんたやりなよ、得意の臆病風ふかせて、びびって断りなさんなよ!」って。多分僕が断るというカンが働いたんでしょうね。
 
 妻はとにかく「来た仕事は10本でも並行しろ!」って感じなので「朝ドラを書いてる間はあんたが今以上にロクデナシになっても怒らない。嫌だけど優しくしてあげるから」なんて取り決めも行われて。それで、折り返したら、やはり朝ドラの話だったんです。なので「やりたいです」と。妻との取り決めは、すぐに守られなくなりましたけど(笑)。

2023.12.14(木)
文=平田裕介