僕のなかでは、スズ子が嘘をつくこと、仮病を使うことで、同期の仲間に自分の本心を訴える場面なんですよね。スズ子にとって、幸子と辰美が、いかに大事で尊敬できる存在かを表している。嘘の裏にあるものを見てほしいんだけど、今はなかなか通用しない。
噓をついたということにまず違和感を持たれてしまうようで、そこは「えー!?」と思ったけど、ネット上の意見やドラマライターみたいな人もモヤモヤするなんて意見があって、そうなんだ……と。
こういうコンプライアンス的なものって、朝ドラだけの話じゃないです、映画でもありますから。最近作った『雑魚どもよ、大志を抱け!』でも、昭和の少年たちが度を越したイタズラをするのですが、そこはプロデューサー陣といろいろ話し合いました。
エゴサはほぼ毎日する
――コンプライアンス的に引っ掛かったキャラクターはいましたか? スズ子の実家の銭湯「はな湯」でかま焚をしている記憶喪失のゴンベエ(宇野祥平)とか、なんとなく言われそうですけど。
足立 ゴンベエは、少し揉めたかもですね。「エッ、記憶喪失?! うーん、どうかなあ……」みたいにな(笑)。
――はな湯の常連客、アホのおっちゃん(岡部たかし)なんて、あまりにも直球すぎますよね。でも、登場しているので問題がなかったということでしょうか。
足立 「アホのおっちゃん」は特になにも言われなかったような気がしますね。ネットでは言われてましたが(笑)。
もっとも話し合いになったのは六郎でしたね(笑)。皆さん少し引っ掛かったようでだいぶ話し合いました。ただ、僕は違和感とか引っ掛かる部分っていうのは映画やドラマにはあったほうがいいと思います。無くしていくほうがむしろ違和感があると言いますか。
――ちなみに、エゴサってしていますか?
足立 毎日やってますね。映画が公開されたときもほぼ毎日します。批判的な意見も率先して見にいくほうですね。Mなので(笑)。映画でも朝ドラでも脚本がダメとかいろいろ意見はあります。ただ、朝ドラで驚いたのはネットの声がそのままネットニュースになることですね。
写真=佐藤亘/文藝春秋
〈柳葉敏郎が水川あさみに「キッスでもしよか」と言うシーンは…『ブギウギ』脚本家(51)が語る、NHKの反応とキャストとの“顔合わせ”〈草彅剛も初出演〉〉へ続く
春よ来い、マジで来い
定価 2,310円(税込)
キネマ旬報社
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)
2023.12.14(木)
文=平田裕介