この記事の連載
- ピエール・エルメ×加藤峰子対談#1
- ピエール・エルメ×加藤峰子対談#2
日本古来の食材を使ったペアリングも
エルメ このカクテルもとても香りがいいですね。
ソムリエ こちらは、黒文字という木をベースに、日本の緑茶を合わせました。
ノンアルコールのものには発酵させた沖縄産ドラゴンフルーツを、アルコール入りのものには日本の焼酎メーカーが造っているカシスリキュールを合わせました。
黒文字と緑茶には、バラと同じゲラニオールという香りの成分があるので、バラのデザートに合わせて作りました。
希少なワイルドカカオを日本で食べる
加藤 次は、「ワイルドカカオのシャーベット」です。
こちらもヴィーガンで、チョコレートと水だけでできています。多くのチョコレートは農園で収穫されたカカオから作られますが、このチョコレートはボリビアの森で採れた野生のカカオを原料としていて、おいしさが圧巻なんです。
野生味があるのかと思いきや、むしろとてつもなくエレガントで、ピュアでクリアーな香りと味わい。このような自然の宝石を、ぜひエルメさんに味わっていただきたいと思い、現地で農学者が発酵させたカカオ豆を、吉祥寺「プレスキルショコラトリー」の小抜知博さんと一緒に研究を重ねて、素晴らしい味わいのチョコレートに仕上げていただきました。日本の市場にもまだ出ていないものです。
エルメ とてもおいしい! 野生のものということは、収穫量がすごく少ないのですよね?
加藤 確かにそうです。ボリビアを含むアマゾンでは森林破壊が問題となっていて、その一番の原因は、コーヒー農園やカカオ農園を造るために平地にされ、企業に売られてしまうこと。だから、アマゾンの原生林で採れる野生のカカオに付加価値を付けることで、それを防ぎ、森林を守ろうというプロジェクトを日本の環境コンサルタント企業である、株式会社サティスファクトリーが立ち上げて、その一環として収穫されたのが、このカカオ豆なんです。
エルメ カカオの味がとてもきれいですね。ちょっと食感としてあるのは、塩ですか?
加藤 はい、塩と、日本の松の実です。
エルメ 日本の松の実を食べるのは、初めてです。とてもおいしかったです!
加藤 ああ、よかったです! 食べるだけで自然の偉大さが感じられて、口溶けよく、官能的なシャーベットになったかと思っています。このカカオは、とてもクリーンな味わいで、ワインみたいな香りがすると思います。全部原種で、いろいろな種類のカカオがミックスされているんですけれど。
ソムリエ このシャーベットに合わせたのが、日本で一番古い柑橘である、橘の樹を使ったカクテルです。シトラスや山椒のような香りがします。ベースはナシとリンゴで、ノンアルコールは橘のシロップを、アルコールは橘のクラフトジンを合わせました。
エルメ 橘! これも初めて経験しました。とてもいいですね!
2023.11.08(水)
文=瀬戸理恵子
撮影=志水 隆