新しい恋愛を始めた人は、過去の失恋の記憶をきれいさっぱり忘れてしまうのではなく「嫌な思い出だけど、これも人生の味わいだよね」と感じられるようになっていき、囚われなくなります。心が治るというのはこれと同じで「不安やこだわりに支配されなくなる」ということなんです。それをこの本では、わかりやすく解説しています。

 世の中には不安やこだわりに支配されてしまう人が結構多い。だからこの本では「支配されないためには、こういうことを知る必要があるんだよ」とか「支配されないってこういうことだよね」と説明しています。

――不安に支配されやすいという人が病院やクリニックに足を運ばなくても、この本を読んで参考にできそうですね。

益田 そう思います。「不安がなくなる」という状態が、完璧な桃源郷みたいな世界にたどり着くことだと思っている人も、世の中には存在します。当たり前だけど、そうじゃない。だから僕らが考えている「平和」というか「不安がない状況」がどういうことなのか、その空気感を共有できれば、お互いにいろんな誤解も減るし、プラスになると思うんです。

 

仲間や他者の心の状態を知る手がかりにも

――現在不安を抱えていない人も、読むと何かためになりますか?

益田 例えば、鬱になった部下と面談をしなければいけない立場の人とか、自分の上司が親の介護か何かのせいで元気が無かったり怒りっぽかったりして困っているとか、あるいは同僚が突然会社に来なくなってしまって心配だとか。不安を抱えてる人ってけっこう身の周りにいますよね。そんなとき、心のメカニズムを知っていればとても役立つと思います。

――不安を抱えた人たちにどう接すればいいのかがわかるんですね。

益田 相手の心の状態を知るには、ちょっと先のテクニックが必要です。例えば、まだ鬱病の手前だけど、落ち込んでいるような状態の人がいたときに、鬱病の治療のテクニックを知っていれば、それを応用して対応できることがある。そういったテクニックを手軽に知ることができるという意味でも、この本は役立つと思います。

2023.10.24(火)
文=市川はるひ