データから浮かびあがる、変化する「家族のあり方」

世界各国で上昇する婚外子の比率。日本と韓国だけがケタ違いに低いのはなぜ?
世界各国で上昇する婚外子の比率。日本と韓国だけがケタ違いに低いのはなぜ?

 一生結婚するつもりはない──18~34歳の未婚者の女性の14.6%がそう答えた。国立社会保障・人口問題研究所はほぼ5年ごとに、結婚と出産に関する全国調査を実施している。

 最新の調査結果(「第16回出生動向基本調査」2021年)によると、18~34歳の未婚者のうち「一生結婚するつもりはない」と答えた人の割合が、女性は前回調査の8.0%から14.6%に、男性は12.0%から17.3%に大きく上昇した。

 ただし、結婚しない=子どもを持たないではない。同調査では「結婚していなくても、子どもを持つことはかまわない」という考えに反対だという人の割合が、女性は63.7%から47.2%に、男性は64.9%から53.5%に低下した。実際は日本における婚外子の出生数は2万40人(2020年)で、全出生数の2.4%にすぎない。

 生殖医療研究とともに家族のあり方に関する研究にも長年携わってきた石原理・女子栄養大学教授によれば、近年は世界各国で婚外子の比率が上昇したが、日本と韓国だけがケタ違いに低いという。

「フランスをはじめヨーロッパや南米では婚外子が50%以上を超える国が多く、チリ、コスタリカ、メキシコは70%を超えます。それらの国では、日本のように婚外子が法的差別を受けることは少なく、そもそも法律婚にこだわっていません。日本では保険診療のカバーする範囲が体外受精などにまで拡大し利用しやすくなったとはいえ、法律婚ではないカップルにとって依然としてハードルは高く、それは社会のシステムが家族ありき、結婚ありきがほとんどなので、結婚しないで子どもを持つことはためらわれる人が多いのだと思います」

チリなどの南米では婚外子の割合が高い。先進国では、フランスは婚外子の割合が60%を超える。日本、そしてお隣の韓国では婚外子の比率は非常に低く、出産は結婚とセットで考える社会通念が強いと推測される。 「OECD FamilyDatabase 2020」より抜粋。
チリなどの南米では婚外子の割合が高い。先進国では、フランスは婚外子の割合が60%を超える。日本、そしてお隣の韓国では婚外子の比率は非常に低く、出産は結婚とセットで考える社会通念が強いと推測される。 「OECD FamilyDatabase 2020」より抜粋。

●お話を聞いたのは……
石原 理(いしはら・おさむ)さん

生殖内分泌学者。女子栄養大学教授(臨床医学)・女子栄養大学栄養クリニック所長。埼玉医科大学名誉教授。専門は生殖内分泌学、生殖医療、生殖人類学など。こども家庭審議会委員も務める。著書に『ゲノムの子』『生殖医療の衝撃』ほか。

数字で見えてくるものは

2023.09.18(月)
text=Atsuko Komine
illustration=Ayumi Takahashi

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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