台所にあるのが当たり前で、特別意識することのなかったフライパン。その可能性が広がるレシピ集が、今井真実さんの『フライパンファンタジア 毎日がちょっと変わる60のレシピ』です。「毎日の台所でも、献立が浮かばないときは、とりあえずフライパンをコンロの上にのせる」という今井さんのレシピでは、煮る、ゆでる、ほうっておくだけで、食材の新しい味わいに出会えます。

 野菜1品から作れる副菜、食材の珍しい組み合わせが楽しめるメイン料理、気軽に作れるご飯ものなど、珠玉のレシピ集から、「鶏もも肉のジューシーソテートマトソース」と「グリーンピースミントバター」をご紹介します。


はじめに

 包丁とまな板、フライパンと熱源があればどこでも料理ができます。

 いいえ、もっといえば、はさみでも材料は切ることができます。

 しかし、フライパンはどんなときでもあったほうがいい。忘れ物が多いキャンプ好きの私が実感していることです。

 いつもとりあえず26センチのフライパンをキャンプ道具に入れていきます。フライパンさえあれば、お鍋を忘れたとしてもお米を炊けます。網を忘れてしまっても、お肉だってパンだって焼けます。あまりにそばにありすぎてフライパンがこんなに万能だなんて、といつも小さく驚くのです。

 毎日の台所でも、献立が浮かばないときは、とりあえずフライパンをコンロの上にのせます。そしてお湯を沸かし、片っ端から冷蔵庫の余りものをゆでていきます。なぜ鍋ではないのかって?

 それは沸騰するまでに時間がかかるから。その間にやる気がしぼむのです。間口が広いので、長い葉野菜だってそのまま入れられます。

 献立が浮かばないときはたいてい疲れているから、焼くよりゆでるほうが胃にもやさしい。フライパンだったら、洗いものもらくちん。ゆで汁をスープにしても良いのです。

 さあ、あなたもそろそろフライパンで料理をしたくなったでしょう?

 ファンタジアには形式にとらわれず展開していく作品という意味合いがあります。

 フライパンファンタジア。自由な料理の世界へようこそ。

 どうぞごゆっくりお楽しみください。

2023.08.02(水)
文=今井真実
写真=今井裕治