斎藤 家事労働に対価を払うというのは平等を担保するひとつの方法になりそうですが、金を払っているからいいだろ、となるのも問題ですよね。いまは男性中心の労働環境ですから、やはり男性のほうから働き方を変えていくべきでしょう。積極的に育休を取るとか、家事をきちんとやるとか。そのためにも私は「週休3日制」を提案しています。働き方をゆるめていくことで男性中心の社会も変わるし、環境にもいい。

スー でもバリバリ働いて、たくさん稼ぎたいという人はまだたくさんいます。

斎藤 そういった価値軸、評価軸から変えていかなければならない。いまの社会では広告業や投資銀行、いわゆるブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)の給料が高くて、そこに高学歴の人が集まっている。でも私たちは、コロナ禍でエッセンシャルな仕事の価値を再認識しました。人間が生きていくために欠かせない、互いをケアするような仕事に優秀な人たちが集まり、ケアこそがもっと評価される社会にシフトする必要があると思います。

 

コロナ禍で明らかになった不都合な真実

スー コロナ禍で不都合な真実がいろいろバレちゃいましたよね。日本でもそういう部分がありましたけど、明確に命の値段が違うというようなことは、アメリカではっきり出ていましたし。コロナ以降の話で、私が一番驚いたのは、女性向けの無店舗型風俗が流行っているということ。昼職の稼ぎが減って、空いた時間に性を売る男性が増えた。一方で、自殺者の増加率は、予想値に比べて男性より女性のほうが多かったんです。こういう社会の“下揃え”みたいなことをどうすればいいんだろうと。

斎藤 資本主義が行くところまで行ってしまっている状況ですね。いまのままだと、誰も幸せになれないと思います。必死に稼いで、いろんなものを外注して、時短のために新しい家電を買う。しかし、データで見ても家事の時間はたいして減っていないんです。お掃除ロボットがうまく掃除できるように私たちは本を動かしたりしなければならないじゃないですか(笑)。ドラム式洗濯機を買えば洗濯の回数が増える。だからいつまでたっても女性は解放されないんです。

2023.07.05(水)
Text=Kosuke Kawakami
Photographs=Wataru Sato