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趣向を凝らした日本料理とご当地楽を堪能

 東照宮や二荒山神社、輪王寺、中禅寺といった社寺を中心に発展した日光の文化。その影響は食にも色濃く残っています。日光に精進料理や湯波料理の専門店が多いのも、そのためです。

 日光の湯波は、豆乳を温めてできる膜の中央に串を入れ、二つ折りにするように引き上げるため、肉厚で柔らかく、もっちりとした食感が特徴。「京湯葉」に対し「日光湯波」と書くのも、その製法により表面が美しく波を打つことに由来しているとか。

 季節の恵みをふんだんに使った夕食の「特別会席」では、そんな歴史と情緒のある食材「湯波」を、ウニを使った先付、和牛と湯波を甘辛い出汁と卵でいただく「湯波と和牛の柳川仕立て」で味わうことができます。

 全国に展開する温泉旅館「界」には、各地の伝統工芸、芸能などを満喫できる「ご当地楽」というおもてなしがあります。「界 日光」では、神官や僧侶の履物を由来とする伝統工芸「日光下駄」を使った「日光下駄談義」が夜毎開催されています。

 「日光下駄」とは、草履の下に下駄の台木を縫い合わせたもの。竹の皮で編んだ草履表を麻糸で台に縫い付けてあり、太めの鼻緒がすげてあります。雪や坂道でも歩きやすく、歩けば歩くほど足になじんでいき、夏は涼しく冬は温かいのが特徴。

 江戸時代、社寺に参入する時は草履を履くのが基本でしたが、日光の社寺は雪や坂道が多いことから、歩きやすさに配慮して考案されたのだとか。

 そんな興味深い背景を、下駄を履いたスタッフがタップダンスを交えながら話してくれます。観覧席には、1足ずつ試し履き用の日光下駄が用意されており、私たちも手拍子、足拍子で参加。会場が一体となって盛り上がりました。

 星野リゾートが全国22か所(2023年5月現在)に展開する温泉旅館ブランド「界」。現代に合うくつろぎを追求した和の空間、土地ごとの風情や、四季の美しさを織り込んだもてなしのファンは老若男女を問わず、海外からのゲストにも人気です。

 日光国立公園内の宿「界 日光」をご紹介する後篇では、宿から徒歩圏内の名刹、中禅寺に関係する伝統文化体験を中心に、さらなる魅力を掘り下げていきます。

界 日光

所在地 栃木県日光市中宮祠2482-1
電話番号 050-3134-8092(界予約センター)
宿泊料金 
◆2名1室利用時1名あたり35,000円~(サ込・夕朝食付き)
客室数 33室
チェックイン15:00/チェックアウト12:00
アクセス JR日光駅/東武日光駅から東武バスで40分 中禅寺温泉下車、徒歩10分
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kainikko/
●Wi-Fiあり

次の話を読む「界 日光」【後篇】 先生は国宝修復に携わる伝統工芸士。 彩色体験に没頭する特別な時間を

Column

ディスカバリーのその先へ 星野リゾートで体験する、新しいニッポンの魅力

日本全国、その土地土地の魅力合わせた宿泊提案をする星野リゾート。その星野リゾートでの宿泊体験を通して、日本の魅力を再発見してみませんか? 

2023.06.03(土)
文=伊藤由起
撮影=鈴木七絵