現在北京の店舗数は45店前後であり、知名度はさほど高くないといわれている。筆者が北京に住む周囲の中国人に問うても、かなりの確率でサイゼリヤを知らない人がいた。しかし、北京の若年層の間では、それなりの知名度があるようだ。
サイゼリヤは、中国の若者にとってどのような存在なのか。より深掘りすべく、筆者が現在留学中の北京で、サイゼリヤ愛好家を自称する中国の大学生40名にアンケートを取ったところ、いくつか興味深いことが見えてきた。
サイゼリヤが日本発であることは知られていない
第一にサイゼリヤが日本発のイタリア料理店であることを知っている人は少ない。サイゼリヤを訪れたことがあったと回答した40人中21人が、イタリアもしくは中国発のチェーン店だと誤認していた。
「好きなメニュー」の設問には、店舗でも人気が窺えたエスカルゴや、日本でもサイゼリヤの看板メニューとされるミラノ風ドリアなどが挙げられた。また、中国限定メニューの海藻サラダや、ドリンクバーを好きなメニューに挙げる人もいた。これは、前述の通り、中国ではドリンクバー自体が珍しいためだろう。
近年日本ではサイゼリヤでお酒を頼む「サイゼ飲み」が人気だが、「サイゼ飲み」の経験があると答えたのは40人中たったの4人。実際に店舗に行った際も、テーブルにお酒が並ぶ卓は多くなく、中国において「サイゼ飲み」はまだまだ浸透していないように感じられる。
「サイゼリヤに対する印象」の設問には、「安くて美味しい」「コストパフォーマンスがいい」といった回答が多かった。中国では、10元あれば10人をお腹いっぱいにできると言われていた時代もあったが、それももはや過去のこと。都市部の物価高騰具合は激しく、他国料理となると一層価格は高くなるのが現状だ。
価格を北京の某イタリア料理チェーン店と比較してみると、ジェノベーゼはサイゼリヤが16元の提供に対し、現地のイタリア料理店では38元である。もちろん味やサービスは大きく異なるが、価格の差は2倍以上。中国におけるサイゼリヤは、なかなか手を出しづらい異国の料理を手軽な値段で楽しめる店なのだ。
安さとコスパの良さ、日中共通した理由で中国でもサイゼリヤは愛されている。
2023.05.29(月)
文=Ricai