でも1人で地中海を眺めていたら、なんとなくそんな気持ちになれなかった。その日の日記にも「7年後は34歳か……」「番組の方向性とかスタッフの意向とか関係なく、自分の主観で物事を伝えていたい」って書いていたんです。だからその当時から、なんとなく「フリーになる」という選択肢は浮かんでいたのだと思います。
——退職される前はどなたかに相談を?
宇賀 いえ、誰にもしていないですね。自分のことは自分で決めたかったし、誰かに相談したら決意が揺らぐ気がして。それに、周りに退職の意向を伝えたらきっと慰留されるだろうなとも思っていました。
——実際はどうだったんでしょうか。
宇賀 びっくりするくらい、誰からも止められなかった(笑)。私の口からしっかり理由や思いを説明したら、みんな「宇賀がそう思うなら応援するよ」と快く受け入れてくれたんです。
独立を決めた最大の理由とは?
——テレビ朝日を退職後、芸能事務所に所属する選択肢もあったと思いますが、完全フリーランスを選んだのはなぜだったのでしょうか。
宇賀 まず、芸能事務所に入ったら“芸能人”にならなきゃいけないと思ったんですよ。でもやっぱり、私のなかで「自分は芸能人じゃない」という思いがある。それに「タレントとして売れないと」って頑張ろうとすると、自分の本当の気持ちとかやりたいことがぶれてしまう気もして。
私が独立を決めた最大の理由は、自分の人生を自分で舵取りしたいから。そのためには、組織の力を借りず、1人でやっていくのがいいだろうと考えました。
ただ、私ごときが生意気にもフリーになるなんて言ったら、多分もう二度と仕事をもらえないだろうなって本気で思っていました。事務所に入らないから仕事のオファーも来ないだろうし、テレビは難しいだろうなって。
でもそんな時に、個人事業主として活動されているジャーナリストの池上彰さんに、「ひとりでやっていきたいと思っている」とご報告をして。
2023.04.19(水)
文=安心院 彩