「全部が“取材”だ」池上彰さんに言われた言葉
——池上さんですか。
宇賀 池上さんはたくさんのお仕事を抱えているのに、本当におひとりでやっていて。オファーも直接ご本人が受けているんです。
そんな池上さんから言われたのは、「全部が“取材”だ」ということ。自分で営業するのも、経理業務をするのも、全部人生の学びになって、いつか人に話せるようになる。それって人生において大きなメリットですよね。全部が“取材”で、人生の糧になると思ったら、急に怖くなくなりましたね。
——フリーランスでやっていく決意が固まったんですね。
宇賀 そうですね。それに、たとえアナウンサーとしての仕事がなくなっても、そのスキルを使えばなんとか食いつなげるとも思いました。
自分自身で練習しておけば、誰かのマネージャーや経理ができるようになりますよね。仕事のスケジュール組みやタクシー・飛行機の手配とかも、普段旅行しているときにやっていること。名刺交換やメール・電話のやりとりも会社員時代にずっとやってたから、きっとできると思いました。
スタッフや共演者の皆さんのおかげでアナウンサーになれた
——会社員生活最後の日は『羽鳥慎一モーニングショー』の生放送日だったとか。
宇賀 忘れもしない、2019年3月末の金曜日の生放送です。その日の朝、まだ誰もいないスタジオに立って、「ああ、もう最後か」って思いながら深呼吸して。真っ暗なスタジオに1人佇んでいると、「私は1人では何もできなかったな」ってあらためて実感したんです。
スタッフや共演者の皆さんのおかげで、私はアナウンサーになれていたんだと。10年経っても私は結局1人では何もできない、入社1日目の新人のままだったんだなと思いました。
だから最後に、皆さんの前で1分くらいお話しさせてもらったとき、「アナウンサーになったつもりだったけど、皆さんにアナウンサーにしてもらった10年間だった」と自然に言葉が出ました。
2023.04.19(水)
文=安心院 彩