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 つねづね「イクメン」という言葉に違和感を持っていたアメリカ研究者の著者。コロナ禍、リモートでの仕事と、2人の子どもの世話をするなかで、「父親が育児に参加すれば問題は解決する」という単純化された問いでは見えなくなるものがあるのではないかと疑問に思ったという。

 そんな「イクメン」という言葉の裏にある、社会やジェンダーの価値観といった本当の問題を捉えようとしたのが『「イクメン」を疑え!』(著:関口洋平)だ。同書より、一部を抜粋して紹介する。

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『FQ JAPAN』─“Dad”から「イクメン」へ

 イギリス版『FQ』の特徴は、良くも悪くも、軽いノリであった。「父親のための雑誌」という「看板」自体は斬新なものであったが、その「中身」は「看板」に追いついていなかったように思われる。『FQ』は従来の父親の性役割を問い直すというより、それを追認していた。では、その日本版である『FQ JAPAN』において、父親の性役割はどのように表象されているのだろうか?

 『FQ JAPAN』は、『FQ』とライセンス契約を結んだアクセスインターナショナル社が刊行する雑誌であり、2006年の創刊以来、年4回、それぞれ3.5万部が発行されている。ショッピングセンターや産婦人科、小児科などではダイジェスト版がフリーマガジンとして配布されているから、目にしたことがあるという方もいらっしゃるはずだ。また、この雑誌は「イクフェス」や「ペアレンティングアワード」といった大規模なイベントも手掛けている。徐々に規模を縮小してオンライン版となったイギリス版と比べると、日本版『FQ』は国内のマーケットのなかで着実に読者を獲得してきたようである。

 では、日本版とイギリス版の『FQ』は、どのように違うのだろうか。まず、日本版には性的な話題や女性のグラビアが少ない。母親に焦点を当てた記事でも、「セクシーな」という言葉が用いられることは稀である。これにはいくつかの要因が考えられる。ショッピングセンターなどの家族向け施設で配布できるようにという戦略的な判断があったのかもしれない。あるいは、「セクシーな母親」が日本の文化においては受け入れられにくいと考えたのかもしれない。いずれにしても、女性の身体的な側面が強調される傾向のあったイギリス版とは一線を画している。

 また、(特に初期の)『FQ JAPAN』の特徴としては、英米の著名な男性を表紙に起用していることが挙げられる。創刊号の表紙は、ジョニー・デップ。その後も、ユアン・マクレガー、ブラッド・ピット、デイヴィッド・ベッカムといった面々が表紙を飾っている。

 これとあわせて目につくのが、“Dad”という単語の多用である。たとえば創刊号の見出しを例にとってみると、「BE A COOL DAD“スタイリッシュに父親を楽しむ”」、「『愛されDAD』研究」、「A DAD’S TRUE LOVE 自然体な子育てをするフランクDAD藤井フミヤ」、「“DADのセンスはバギーで差が出る!”」などなど。

2023.04.17(月)
文=関口洋平