大阪の若手芸人が初めて全国ネットのゴールデンに登場したのが、この番組だったというエピソードを思い出しました。
こうしてつい、自分のことに引き付けて読んでしまうのは、この本の底に流れる「熱」のせいだと思うんです。
ここに書かれた「現場の将棋メシ」一番の読みどころは、外では決して見せない、棋士たちの勝負に賭ける熱い素顔です。たとえば、三段リーグを勝ち抜いて、ついに棋士になった日の鈴木大介九段が酔いつぶれる場面。鈴木九段が奨励会員だった頃から研究会に呼び続けた先崎先生だからこそ、こんな風に書けるんですよね。
僕は四十代で、五十代以上の先輩方の武勇伝の匂いはわかる世代です。あのコンプラゆるゆるの時代の、ムネアツで貴重な証言の数々を、今後もぜひ書いて頂きたいです。
2023.03.28(火)
文=高橋 茂雄(サバンナ・お笑い芸人)