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料理がワンランク上に見える器「出西窯」

 出雲市にある出西窯は実用性とセンス豊かな色使いを兼ね備えた人気の工房。昭和22年(1947)に5人の青年が賛助者の協力のもとに創業し、苦労を重ねながら、柳宗悦、濱田庄司、バーナード・リーチの指導を受け、民藝の世界観を確立した。

 木を贅沢に使った店内には、シンプルながら味わいのあるマグカップ、皿などが見やすく置かれている。同じ器でもカーブや持ち手が微妙に違うので、一つひとつ手にとって自分にフィットするものを見つけていくのが楽しい。

 買いすぎてしまったら配送してもらえるので、気になったアイテムは臆せず購入!

アイテムによって登り窯と灯油窯を使い分ける

 器がどのように作られているのか工房を窯元の多々納真さんに案内してもらうと、まずは土の話からしてくれた。

「出西窯は創業から地元の土を使っており、今は島根県の西部と東部の4種類の粘土を混ぜながら使用しています。砂や石を取り除いてから、機械で水分を絞り出して寝かす。ここが一番の肝なんです。寝かせると、水をある程度含んだ土はバクテリアが働き始め醬油や味噌と同じように発酵する。半年ほど寝かせると粘りが出きて、成形しやすい粘土ができるんです」(多々納さん)

 成形が終わったら素焼きをし、発色をよくするため白化粧(白い粘土)をかけてから釉薬をのせていく。

 「釉薬は広葉樹の灰を江戸時代から変わらない割合で調合しています。今は灰の確保が難しくなっていて、うちの薪ストーブの灰だけでは足りず、いろいろなところから譲っていただいています」と多々納さん。

 釉薬を掛けてあとは本焼きへ。出西窯では登り窯、灯油窯、電気窯を使っている。

「うちの6連の登り窯は約60年前に島根県の最後の窯職人さんに造ってもらいました。昔は年15回焚いていましたが今は4回ほどです。薪窯、灯油窯、電気窯それぞれ熱の入り方が異なることで表情が変わるので、器の特性に合わせた窯を使っています。たとえば、うちの代表作である、青い縁鉄砂呉須釉皿は灯油窯でないとクリアな色が出ないなど、仕上がりが違ってくるんです」

 時代に合わせて進化しているものづくりの姿勢は器の魅力に映し出されている。

出西窯

所在地 島根県出雲市斐川町出西3368
電話番号 0853-72-0239
営業時間 9:30〜18:00
定休日 火曜(祝日の場合は開店)
https://www.shussai.jp/

2023.03.12(日)
文=CREA編集部
写真=鈴木七絵