この記事の連載
島根の旅【前篇】
島根の旅【後篇】
春の訪れを日に日に感じ、旅への気分が高まるシーズン。暮らしに彩りを添える器を探しに山陰地方の島根県を巡ってみませんか?
ものづくりの文化が受け継がれてきた島根には、民藝運動の影響を受けた窯元が多く、大らかで味わいのあるアイテムに出合えます。
さらに、宍道湖に面した美術館には葛飾北斎の作品が揃っており、あらためてその魅力を実感。感性を刺激する手しごと&アートの旅は心を磨いてくれます。
温かみのある民藝の風合いに心惹かれる「湯町窯」

美肌の湯で有名な玉造温泉エリアにある湯町窯は大正11年(1922)創業の窯元。創業当初は出雲大社へ参拝に訪れた人たちが土産品として買いに来るなど人気を博したが、時代とともに次第に低迷していく。しかしその後、昭和6年(1931)に2代目福間貴士が柳宗悦の民芸理論に感銘を受け、民芸運動に参加した後、昭和9年(1934)に訪れたバーナード・リーチらの指導を受け、民藝という新しい価値が生まれていった。

やわらかな黄色の色合い、スリップウェアといった民藝作品を代表する器が今もなお受け継がれている。3代目の福間琇士さんは「私の父である2代目はカップの取っ手は、人差し指が1本入るように、飲み口は唇が喜ぶようにとバーナード・リーチさんから教えてもらったそうです」と話す。見た目だけではなく、使って快適な器は、変わらず幅広い世代に愛されている。




黄色、飴色、淡いブルーなど個性豊かな色合い、やわらかなニュアンスの器が暮らしの中に溶け込み、温かな雰囲気を作り出してくれる。
湯町窯
所在地 島根県松江市玉湯町湯町965
電話番号 0852-62-0726
営業時間 8:00〜17:00、土日祝9:00〜17:00
定休日 無休
https://www.kankou-shimane.com/destination/20380
2023.03.12(日)
文=CREA編集部
写真=鈴木七絵