この記事の連載

奈良美智を育んだ弘前市

 吹き抜けの大空間を見下ろす2階の展示室には「奈良美智と弘前での時間」と題された展示が。高校まで過ごした弘前という土地が、いかに奈良の感性を育んだのかを追体験できるかのようだ。

 圧巻なのは、2階に上がってすぐの300枚以上のレコードが壁一面に飾られている展示。ロックが好きで、毎日ロック喫茶に通っていたという奈良美智らしい展示だ。

奈良美智からその次の世代へ

 展示の最後は「動き続ける場へ」と題した、奈良の展覧会をきっかけに生まれた未来の創造のかたちを紹介している。

 青森県黒石市出身で、高校2年生の時に「YOSHITOMO NARA +graf A to Z」のボランティアスタッフとして関わり、現在はガラス素材を用いた作品を中心に、作家として活動をしている佐々木怜央の展示「雪の様に降り積もる/2006年の記憶から」もそのひとつだ。

 会期中は、展示に関連したさまざまな催しも行われる。この展覧会をきっかけに訪れた弘前市の人々や旅行で訪れた来訪者が、気づきを見つけて、また次世代へと感性の糸を紡いでいくだろう。

 3月4日にはワークショップ「箱をつくってみませんか?」が行われたり、会期最終日の3月21日にはコンサートイベント「夜のロック部 in ナイトミュージアム」(抽選申込は終了)が開催されるなど、他にもさまざまなイベントが予定されているので、公式HPなどでチェックしてみて。

 ただ作品を展示するにとどまらず、人や街を巻き込み、新たな可能性を生み出してきた弘前れんが倉庫美術館。アートがもたらす、有機的でワクワクする営みを肌で感じることができるまたとない機会、是非足を運んでみてほしい。

» 写真を全てみる

「もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?」奈良美智展弘前 2002-2006 ドキュメント展

会期:2022年9月17日~2023年3月21日
会場:弘前れんが倉庫美術館
所在地:青森県弘前市吉野町2-1
開館時間:9:00~17:00
※入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜(ただし3月21日は開館)
料金:一般1,300円、大学・専門学校生1,000円、高校生以下無料
https://www.hirosaki-moca.jp/

次の話を読むシードルと青森の料理を堪能 弘前れんが倉庫美術館に併設する 新感覚の弘前レストラン・ブリック

← この連載をはじめから読む

2023.02.11(土)
文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘