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 弘前れんが倉庫美術館で「『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』奈良美智弘前 2002-2006 ドキュメント展」が開催中です。

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1本の電話から、すべてが始まった

 多くのアートファン、そして弘前市民に芸術と触れる喜びを伝えている弘前れんが倉庫美術館。かつてここは、吉井酒造煉瓦倉庫と呼ばれる倉庫だった。

 時代を経て役割を終えた倉庫では、「古都弘前の大切な風景としての“れんが倉庫”を守る」、そうした思いから、市民ら有志によって講演会や町おこしイベントなどが開催され、美術館としての再生・活用についても検討されたが、当時は実現に至らなかった。

 そうした中、当時の煉瓦倉庫のオーナー・吉井千代子が奈良美智の作品に惹かれ、煉瓦倉庫で展示がしたいとギャラリーに問い合わせをした。そのたった1本の電話がきっかけとなり、2002年の「I DON‘T MIND, IF YOU FORGET ME」が開催され、2005年の「From the Depth of My Drawer」、2006年の「YOSHITOMO NARA + graf A to Z」へと繋がっていった。

煉瓦倉庫と弘前の街との関係に大きな有機的なうねりをもたらした奈良美智の展覧会

 「『もしもし、奈良さんの展覧会はできませんか?』奈良美智弘前 2002-2006 ドキュメント展」は、そんな弘前と煉瓦倉庫の関係性において重要な意味を持つ、3度の展覧会に新たにフォーカスし、振り返っている。

 9つの切り口にテーマが分けられ、当時実際に関わった人たちの証言映像やポスター、販売されたグッズなどを展示。

 携わった人たちの熱量や、どういう展覧会にしたかったか、当時の様子がうかがい知れるだけでなく、この展覧会が、煉瓦倉庫、そして弘前の街や人々にどのような影響を与えていったのかを実感することができる。

2023.02.11(土)
文=CREA編集部
撮影=佐藤 亘