未知なる世界への旅気分を満喫! ショップにも貴重なイカットが

 レンバタ島ラマレラ村で古くから脈々と受け継がれてきた、ほかに類をみない海の民によるイカットづくり。

 綿から糸を紡ぎ、ヤシの葉を使って括り染めにし、丹念に一枚一枚織られたイカットには、まさに手仕事の魅力が凝縮。膨大な手間と時間がかかることから、生産量も極めて少ない、幻の伝統工芸です。

 今回の展示を担当した主任学芸員の高梨浩樹さんによれば、「ラマレラ村のイカットは、すべて村の人々による素朴な手づくり。工芸品としては、ほかの産地のほうがスタイルも技法も洗練されているかもしれません。でも今回の展示は、一見すると地味なこのイカットに秘められた、さまざまなストーリーを踏まえたうえで鑑賞していただけるとうれしい」とのこと。

 そこで今回の展覧会の見どころとなっているのが、イカットづくりの背景にある村の人々の暮らしにフォーカスしたパネル展示。伝統の鯨漁、塩づくり、物々交換のシステムなどをわかりやすく解説しています。

 「たば塩 (たばこと塩の博物館) の展示は、ほかとは視点がひと味違いますよね、とよく言われるんですよ  (笑)」と高梨さん。

 さらに今回の展覧会期間中には、展示品とは別に江上さんがコレクションしてきたイカットの一部をミュージアムショップで購入することもできます。

 ジャワ島やバリ島のイカットは、ギャラリーなどで見かけることもありますが、レンバタ島のものを実際に手にできるのは、滅多にない機会。ハンドクラフト好きは、お買いもの目的で出かけてみたくなる展覧会となっているのです。

 スマートフォンなど現代文化の影響を受けながらも、約400年にわたって守り続けられてきた島の暮らしと、そこで受け継がれる珠玉の伝統工芸。

「こんなすごい島があるのか……」と未知なる世界に驚き、さらに今この瞬間にもこの営みが続いていることに思いを馳せれば感動もひとしお。つかの間の非日常を楽しみに、ぜひ出かけてみたい!

江上幹幸コレクション インドネシアの絣・イカット ~クジラと塩の織りなす布の物語~

会場 たばこと塩の博物館  (東京・押上)
開催期間 2023年1月21日 (土)~4月9日 (日)
開館時間 10:00~17:00 (最終入館16:30)
休館日 月曜
料金 大人・大学生 100円 小・中・高校生 50円
アクセス とうきょうスカイツリー駅より徒歩約10分
https://www.tabashio.jp

2023.02.22(水)
文=矢野詔次郎
写真=橋本 篤