この記事の連載

和久井香菜子さん[少女マンガ研究家]

Q1:最愛の一作

『日出処の天子』(山岸凉子/KADOKAWA)

 受験間近な中学3年生のときに出合いました。圧倒的な世界観に引き込まれ、頭がグルグルしてしばらく呆然。厩戸王子の抱える闇にひたすら打ちのめされ、登場人物に真剣に腹を立てるなど厨二病を発症しました。

Q2:マンガを読むスタイルは?

 紙で買っていたときは置き場所に困って、買っては売りを繰り返していました。今は完全電子派です。iPadで睡眠前後にベッドで読みます。楽しみな新刊が出たときは食事中にも。

Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由

『ババンババンバンバンパイア』(奥嶋ひろまさ/秋田書店)

 男性作家ですが作品からはBL臭がプンプンしています。バンパイアの森さんがめちゃくちゃ萌えです。タッチはシリアスなのにギャグがギッシリ詰まっていて、最高の癒やしです。

『後ハッピーマニア』(安野モヨコ/祥伝社)

 「結婚はゴールじゃない」ことを20年経って証明したような作品。アラフィフのリアルをこれでもかと描いていて面白いけど胸が痛い。メッセージは深いのに表現は軽口で、エンタメのお手本です。

『詩歌川百景』(吉田秋生/小学館)

 『海街Diary』(小学館)につながる物語。大きな事件があるわけでもなく、淡々と人物の関係性や葛藤を描くところは文学作品のよう。

Q4:各部門への推薦作品とその理由

●女の人生部門

『ジーンブライド』(高野ひと深/祥伝社)

 ミステリアスな設定なのだけど、細かに語られていることは仕事でのセクハラといった女ゆえの生きづらさ。フィクションとリアルが絶妙に入り組んでいる傑作です。

●お仕事部門

『ヨコハマ物語』(大和和紀/講談社)

 明治時代が舞台。商社を経営することになった万里子の発想の柔軟性や行動力は現代のビジネスシーンでも役に立つでしょう。ふたりの女性の人生を描きつつ、学びしかない情報量の多さは圧巻。

●胸キュン部門

『溺れるナイフ』(ジョージ朝倉/講談社)

 神様のように神々しいコウちゃんが、ただのやんちゃな子どもに成り下がってしまう失望や、素直になれないふたりの関係、親の支配下にあるもどかしさなど、作品と同じ経験はしていないけど「わかる」青春物語。これまたラストがいい。

●戦争部門

『夕凪の街 桜の国』(こうの史代/双葉社)

 終戦から10年後の広島。原爆という殺人兵器を投下された街の人たちは、どう生きていたのか。短編だが一コマ一コマが伝える心情が胸に沁みます。号泣必至の作品。こうの先生の作品は大英博物館開催の「マンガ展」でも原画が展示されました。

和久井香菜子(わくい・かなこ)
少女マンガ研究家

ライター、少女マンガ研究家、TLノベル編集。少女マンガ研究で「マツコの知らない世界」などのメディア出演も。京都芸術大学2年生の日本マンガ学会会員。

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2022.12.15(木)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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