この記事の連載
山脇麻生さん[ライター・編集者]
Q1:最愛の一作
『ムーたち』(榎本俊二/講談社)
一見、不条理な世界に、いつのまにか理性で抑え込まれてしまい、大人が手放してしまった類の自由な発想が潜んでいる大好きな作品です。
Q2:マンガを読むスタイルは?
最近は雑誌を追うことが減り、単行本を買ってお風呂に浸かりながら読むことが多いです。移動中はマンガアプリ、特装版や翻訳ものなど大判の単行本は夜寝る前に。
Q3:夜ふかしマンガ大賞に推薦した作品とその理由
『ダーウィン事変』(うめざわしゅん/講談社)
半分ヒト、半分チンパンジーのチャーリーは、好奇の目にさらされながらも高校に通い、ルーシーと友情を築きます。その一方で、動物解放を謳うテロ組織に目をつけられて……。種を超えた者同士、真に分かり合えるのか? という気になるテーマはもちろん、チャーリーの身体能力の高さやスーパーフラットな思考にも惹きつけられます。
『光の箱』(衿沢世衣子/小学館)
舞台は生と死の狭間に存在するコンビニエンスストア。訪れる客も働いているスタッフも、死に瀕した人間が人ではない何かなのですが、お互いを補完しあいながら働き、禍にあたる。全ての関係性に傾斜をつけない作者のまなざしと、作品全体をうっすら覆う死の香りが好きです。ヤミネコのとろみもよき。
『絶滅動物物語』(うすくらふみ/小学館)
ステラーカイギュウ、ドードー、オオウミガラスといった動物たちが、森林破壊や乱獲など人の手によって進む絶滅へのカウントダウン。動物たちは擬人化されていませんが、切ない瞳や住処を見守る静かな後ろ姿が情感たっぷりに描かれていて胸に迫ります。
Q4:各部門への推薦作品とその理由
●お仕事部門
『ファッション!!』(はるな檸檬/文藝春秋)
その才能は本物なの? フェイクなの? とやきもきさせてくれるジャンくんの不穏な動きから目が離せない本作ですが、ファッション業界や東京コレクションの舞台裏、ブランドがどうやって周知されていくかなどが分かりやすく物語に落とし込まれていて、お仕事マンガとしてもめちゃくちゃ面白いです。
●音楽部門
『BLUE GIANT EXPLORER』(石塚真一/小学館)
ジャズに魅せられ、情熱と努力で周囲の人を圧倒し、ヨーロッパからアメリカへ! そんな主人公が言葉の通じない国で多くの才能と集い、音楽的成功を収め、その成功に執着せずにさらなる高みを目指す。彼がよく口にする「世界一のサックスプレーヤー」とは何を指すのか目撃せずにはいられません。
山脇麻生(やまわき・まお)
ライター・編集者
マンガ誌編集を経てフリーに。各紙誌でコミック評およびコミック関連記事を執筆。インタビューや食、酒、地域創生にまるわる取材も手がける。
2022.12.15(木)
Text=Ritsuko Oshima(Giraffe)