一度余計なことを全部忘れて、自分に正直に生きてみると楽しい

――以前、あるインタビューで「30歳になったらきっといい役が来ると信じていた」といったことを仰っていましたが、そのときに「待つ」ことができたのはなぜだと思いますか。

 20代は仕事がない時期が続いて、まだ大したことが出来るわけじゃないのに、なぜか「私はできる!」と自信だけはあったんです。そう思っていた頃に、業界の人から「真千子は30歳になると役が来る」と言ってもらえたんですよ。

 それまでは悔しい思いもしたけど、「頑張ってやって来た甲斐があったな、30歳まであとたった○年じゃん!」と思えたんです。そしたら本当に30歳になる年に、朝ドラのヒロイン役をいただいたので、びっくりしました。それまで苦労はあったけど、その頃の嫌な思い出ってないんですよ。30歳になるまでを待っている間も楽しかったですね。

――つらいように思える下積み期間も楽しんでいる尾野さん、素敵です。CREA WEB読者に向けて、“しなやかに生きるコツ”があれば教えてください。

 私は35歳くらいから周りを気にしなくなって「自分のスタイルでいいや」と思うようになったんです。若い時ってどうしても真似事が多いでしょう。「雑誌に書いてあったから」とか「テレビでこう言っていたから」とか。その一生懸命さってすごくすてきだけど、本当はこんな服着たくないのに、世間で「かっこいい」「かわいい」って言われているから着るみたいなことはもうやめました。

 楽しい気分にならないものを着るのは自分らしくないし、やりたいことをやって、やりたくないことはやらない。仕事のためだったらいくらでも頑張るけど、プライベートまで自分を縛る必要はないと思ったの。

 一度余計なことを全部忘れて、自分に正直に生きてみたら楽しいかもしれないですよ。例えば、ダイエットのことも気にせず、食べたいものを食べる。一日ぐらいそういう日を作ってもいいかもね。大体、ダイエットしていたら楽しくないじゃない? ダイエットもファッションも、それに恋愛も、結局は「自分らしく」でいいんじゃないかな。

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尾野真千子(おの・まちこ)

1981年11月4日生まれ、奈良県出身。映画監督・河瀬直美の目にとまり、1997年の映画『萌の朱雀』で主演デビュー。 同作品で「第10回シンガポール国際映画祭」主演女優賞を受賞。近年の出演作は、映画『茜色に焼かれる』、『ハケンアニメ』、『ミニオンズ フィーバー』(日本語吹き替え声優)、『こちらあみ子』、『サバカンSABAKAN』など。

『千夜、一夜』

2022年10月7日(金)テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開

出演:田中裕子、尾野真千子、ダンカン、安藤政信、白石加代子、長内美那子、田島令子、山中崇、阿部進之介、田中要次、平泉成、小倉久寛
監督:久保田直 脚本:青木研次
製作:映画『千夜、一夜』製作委員会
配給:ビターズ・エンド
(c)2022映画『千夜、一夜』製作委員会
https://bitters.co.jp/senyaichiya/

2022.10.03(月)
文=根津香菜子
写真・佐藤 亘
ヘアメイク=黒田啓蔵(Iris)
スタイリスト=関口琴子(ブリュッケ)