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 アシェット・デセールとは、レストランなどで料理の後に提供される皿盛デザートのこと。そのアシェット・デセールを料理とは切り離し、それだけで注文して楽しめるパティスリーや専門店が続々とオープンし、注目を集めています。

 アシェット・デセールの醍醐味はなんといっても、瞬間の芸術とも呼ぶべき、決して持ち帰ることのできないできたて・つくりたてのおいしさです。この秋、極上のおいしさに酔いしれてみせんか?


アシェット・デセール×ワインを看板に、誕生したばかりの話題店

 2022年8月、東京・赤羽橋にオープンした「relevé(ルルベ)」は、「1枚のお皿の上にフランスの伝統と日本の旬を表現する」をコンセプトとした、シックな装いのアシェットデセール専門店です。

 メニューに並ぶのは、常時3品のアシェット・デセール。使用する果物の旬に応じて、内容は変わります。

 9~10月提供の「巨峰のデザート ホットワイン風」は、低農薬栽培でなるべく環境に負担のかからない農業を目指す、山梨県「銀河農園まきおか」の巨峰を使い、フランスで「ヴァン・ショー」と呼ばれるホットワインの味わいを再構築したひと皿。

 シナモンやカルダモンなどのスパイスが香るクレーム・ブリュレに、グラッパ漬けのレーズン、セミドライにした巨峰とフレッシュな巨峰をのせ、フレッシュな巨峰を皮ごと使ったソルベを重ねます。その上にスパイス風味のチュイルをかぶせ、トップにはオレンジの皮を加えた生クリームと、オレンジの皮のコンフィを。口に運ぶたび、さまざまに表情の異なる巨峰が舌を楽しませ、そこにスパイスやオレンジの香りが加われば、口に広がる味わいはまさにホットワイン! みずみずしく、気品ある香りにふわりと包まれます。

日本の栗の魅力を伝えてくれる皿盛りモンブラン

 一方、「和栗のモンブラン」は、栗の名産地のひとつとして知られる岐阜県・中津川にある新田農園の和栗を使い、その繊細な風味に、同じ和の素材であるすだちと黒糖を合わせたひと皿。黒糖のソースとクランブル、メレンゲ、和栗のペースト、黒糖を使った和栗の甘露煮、すだちの皮を加えた生クリームを層に重ね、バタークリームをベースとしたなめらかな和栗のクリームを上からたっぷりと。仕上げにすだちの皮を加えたメレンゲをのせ、黒糖を使った和栗の甘露煮と黒糖のアイスクリームを添えて提供されます。

 「和栗は、洋栗に比べて風味が繊細で、やっぱり和の素材が合うな、と思いました。和栗の風味を邪魔することなく引き立てるものはなにかな、と考えて思いついたのが、さわやかでさっぱりとしたすだちと、自然な沖縄産の黒糖です」と話すのは、オーナーシェフの宇野澤惟さん。栗だけではどうしてももったりしてしまうところ、すだちのひかえめなさわやかさが加わることで、最後まで食べ飽きないすっきりとしたおいしさに。ほどよくバランスが取られた黒糖のコクが和栗にやさしく寄り添い、味に深みをもたらします。

2022.09.28(水)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵