――ところがその作風が、見事大ヒット。一足飛びで人気漫画家の仲間入りに。
柴田 あの頃は単行本が売れる時代でしたからね。1冊30万〜40万部は珍しくなかったし、『パプワくん』も全7巻で600万部。ほかの漫画家は外車とか買っていましたけど、私は特に使いみちがなくて、通帳の数字だけが増えていきました。ただ、税金もバカみたいにとられましたけどね(笑)。
松本人志との出会いで「夢だった画家」に転身
――現在は「画家」として、精力的に活動されています。
柴田 2年前の2月に六本木一丁目で偶然、松本人志さんをお見かけして。その瞬間にスゥッと頭の中に「この人のテレビ番組に出たら、絵を描いて個展をやろう」という考えが浮かんだんです。
その半年後、偶然『ワイドナショー』から出演依頼をいただいたんです。コロナで家にいる時間も長くなっていたし、そこから張り切って絵を描くようになったら、今度はテレビ局の知り合いが7年ぶりに連絡をくれて。今描いている絵を見せたら、画廊オーナーを紹介してくれる運びとなって、トントン拍子に画家デビューが決まりました。だから、画家デビューは松本人志さんのおかげなんです。
――10代の頃の「画家になりたい」という夢が実現したわけですね。
柴田 ようやくです。でも漫画家になって、無駄じゃなかったなと。実は美大時代に描いていた絵は、セザンヌみたいな古典的なものでした。
今のような現代的なタッチの絵が描けるようになったのは、間違いなく漫画を30年描いてきたから。そのおかげでほかの画家とは違う、独自の画風が身についたのだと思います。
柴田亜美が目指す未来
――もう漫画は描かないのですか?
柴田 絵を始めてからは、なかなか暇がありません。キャラクターデザインのような単発の仕事はやっているのですが。
――柴田さんはルポ漫画やエッセイ漫画も人気ですし、引き合いも多いのでは?
柴田 うーん……でも、今のいちばんの夢は画家です。縁あって漫画家にはなったけど、画家は高校生からの夢。今日までその時その時を一生懸命過ごした時間があってこそ叶った夢だから、今はこっちに専念するつもりです。
2022.09.26(月)
文=吉河未布