人間は絶対にNGを出せない、猫との撮影

――思うようには動かないなど、猫たちとの撮影は大変なこともあったのでは?

 猫のシーンは、もう全部大変です。芝居パートはスムーズにいくのですが、猫だけのシーンの撮影は後に回してどんどんツケみたいになっていくので、「猫借金だ」なんて言っていました(笑)。

 一番難しかったのは猫と人間が一緒のシーンです。猫は同じ動きは二度とできないので、そのシーンでは人間は絶対NGを出せない。この作品に出ている猫たちは基本的に飼い猫なので、「お座り」や「待て」はできないけど、その分猫本来の自然な姿が映っていると思います。

――大変だったんですね。本作の撮影で、何か“猫スキル”は身につけましたか?

 自分自身が猫を飼っている経験から分かっていることや、持っている技を使いながら撮影したので、特に新しく身につけたことはないかもしれないですね(笑)。

 おもちゃで遊ぶシーンも、こうやって動かせば食いつくということも分かるし、「今嫌がっているな」とか「この子はここが良いんだな」ということが徐々に分かってきて。この現場で新たにやったことといえば、この猫ちゃんがどういう性格をしているかを探る作業だけで、猫スキルはもう身についていると思います(笑)。

――優斗も猫の気持ちが分かる人でしたが、古川さんも相当「猫ゴコロ」がお分かりになるようで!

 猫は意外と表情に出ますからね。怒っている時は「イカ耳」(耳が横にピンと張ったり、少し後ろに伏せている状態のこと)になったり、尻尾の動きで嫌がっているということも分かります。自分は比較的、「この子は今こういうことを考えているのかな」というのが分かる気がするんです。猫たちも感情を隠しきれていないので、さりげないところで発している気がしますね。

――ご自身が飼っている猫以外でも、その子の気持ちが分かるのはすごいですね。

 この子たちだけですよ。本作に出演している猫たちは純粋な飼い猫なので、感情を素直に出してくれるんです。いわゆるプロ猫やカフェ猫にいる子たちはトレーニングされているので、“猫味”みたいなものが中々出てこないんですよ。

――実際に古川さんも猫と暮らしてみて、変化や気づきはありましたか?

 元々は犬好きだったんです。犬は賢いイメージがあって、猫はそういう印象がなかったんですけど、初めて猫と触れ合う機会があった時に、「この子たちは結構人間のことを見ていて頭がいいんだな」と気づいてからどんどんハマっていきました。

 自分は、犬を飼う人と猫を飼う人って人間的に違うと思っているんです。猫って、基本的に身勝手で、飼い主のことを積極的に愛してくれない。そんな生き物を愛せるという特性を持った人じゃないと、猫は飼えないんじゃないかと思っていたんです。だけど、自分もそっち側の人間なんだということは意外な気づきでしたね。

――人のお腹や胸の上で寝るなど、猫って面白い行動をするなと思うのですが、古川さんが一番気になる猫の行動はどんなことでしたか?

 うちで飼っている「ルーク」は、うんちをするときに首を左右に振るんですよ。踏ん張る時だけ首を振るのがもうかわいくて(笑)。

 あと、ルークは「ニャー」じゃなくて「プス」って鼻が詰まっているみたいに鳴くんですけど、それがまたすごくかわいいんですよ!

 猫って高いところから落ちてもカッコよく着地するじゃないですか。だけどうちの子は着地できずに、バタンって倒れるんです。そんな「面倒を見てあげなきゃいけない感じ」があるのに、猫同士がケンカしていると、今まで見たことないスピードでぶわっと走って来て、止めに入るんです。「なんて正義感の強い子だ!」と、さらに愛おしさが増して。自分は猫全般も好きですが「うちの猫」が一番好きです。

2022.08.04(木)
文=根津香菜子
撮影=榎本麻美