「猫を飼っている人が嫌なことはやめよう」と提案
――古川さんが演じる二星優斗は、人づきあいが苦手で社会人経験がなく、世間知らずなところがあります。演じるうえで意識したところはありますか?
最初に台本を読んだとき、優斗はあまりにも奇人だったので「どれぐらい変な人にしますか?」という話を監督としていました。
でも、台本を読み進めていくと「僕は社会を知らないんだ」という優斗のセリフが出てきて「彼は極度に世間知らずな人なんだ」と思い、その加減をどうするかというのは気をつけましたね。
この作品は、基本的に猫が好きな人が見る作品になっているので、「猫を飼っている人が嫌がるようなことはやめましょう」という提案は自分からも色々させてもらいました。
――例えばどんなことを提案されたのですか。
ドラマで、雨が降っている日に猫がいなくなってしまい、朝まで帰ってくるのを待っている、と台本に書かれていたのですが、これは飼い主としてはありえないことなんです。
寒くて猫が凍え死んでしまうこともあるから、「真っ先に外に出て探さなきゃダメです」と言って変更してもらいました。
あと、「二星ハイツ」では猫と人間の食べるものが一緒という設定なのですが、ある時、みそ汁の中にネギが入っていたんです。だけど、猫は絶対にネギを食べてはいけないので「ネギはダメです」ということなどは自分の方から提案をして変更になりました。
――今回の劇場版では、優斗の過去や家族の秘密も描かれています。弟を見つけるために積極的に行動する優斗の姿が印象的でしたが、古川さんが演じていて優斗の成長ぶりをどんなところに感じられましたか?
映画では優斗が初めてバイトをするシーンが出てくるのですが、今まで働いたことがない人がバイトをするって結構大きな一歩だと思うんです。最初は同居人の修たちとLINEの交換もできなかったし、人とまともに話すことができなかったので、その頃と比較すると大分成長しているなと思います。
ドラマの最終回で、同居人のみんなが「二星ハイツ」から旅立っていくのですが、その姿を見て、優斗もまた一歩踏み出そうとする。そこが一番の成長かなと感じています。
あとは、長井(短)さん演じる由美と優斗がちょっといい感じになるので、恋愛面の行方(?)にも注目して見て頂きたいですね。
――チャーやクロなど、個性豊かな猫たちとの共演はいかがでしたか。
最初の頃は落ち着きがなくて暴れちゃったり、表情が硬かったんですけど、慣れてくるとその場で寝たり甘えてきたり――。日に日に猫ちゃんたちが撮影の環境に慣れていく様子が見て分かるのが嬉しかったです。
猫が苦手なスタッフもいたのですが、気づいたら猫の周りに集まっていたりして。猫たちが現場にいることによって、大変な撮影が続く現場でもみんな癒されていましたね。
2022.08.04(木)
文=根津香菜子
撮影=榎本麻美