手軽さのウラに潜む意外なリスクを知っておこう。「文藝春秋」2022年7月号より、医療ジャーナリストの長田昭二氏による「名医が飲んでる市販薬」を全文公開します。(全2回の1回目、後編に続く)

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【かぜ薬】総合感冒薬は避けよう

 かぜ(感冒)が疑われる時、まずどうしたらいいのだろう。

「とるべき対処は、年齢などによって変わってきます」

 そう教えてくれたのは、国際医療福祉大学成田病院呼吸器内科部長の津島健司主任教授だ。

「免疫が十分にできていない乳幼児と、心疾患や腎疾患、呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患を持つ高齢者は、すぐに医療機関を受診すべき。それ以外の年代の人は、自宅で十分な睡眠と休養、栄養を取ることで免疫力を高め、自然に治るのを待つことをお勧めします。通常の感冒なら3~4日で回復傾向に転じるはず。1週間経ってもよくならないときは、何らかの原因が隠れているはずなので、そこで受診をしてほしい」

 では、市販薬はどのように活用すれば良いのだろうか。着目すべきポイントは「症状」だという。

「市販薬は上手に使わなくてはいけません。いわゆる“かぜ薬”は感冒そのものを治す薬ではなく、あくまで症状を抑える薬。いま出ているつらい症状を抑えることでラクに休養できるようにして、回復を早めることを目的とする薬です。したがって、高熱がつらいなら解熱薬、咳がつらいなら咳止め、鼻水がつらいなら抗ヒスタミン薬など、狙いを定めて選ぶ必要があるのです」

 つまり、症状に合わない薬を飲んでも、かぜを治す効果は期待できない、ということ。「前回かぜを引いたときは効いたから」という理由だけで、深く考えず同じ薬を選ぶべきではないのだ。これは医療機関でも同じことで、医師は患者の訴える症状に合わせた薬を処方している。決して「かぜを治す薬」を出しているわけではない、ということを知っておく必要があるだろう。

 

2022.07.06(水)
文=長田昭二