「40代の女性患者さんから『ぜんそく発作で苦しい。いますぐ受診したい』と連絡をいただいたことがあります。電話で状況を伺うと、生理痛で受診した婦人科でエヌセイズを処方され、それを1時間前に飲んだところ発作が生じたとのこと。電話越しでもかなりの喘鳴と呼吸困難が伝わってきました。彼女がいる場所を聞くと、私のクリニックよりも近くに中核病院があったので、そこのER(救急救命室)に駆け込むことを勧めました。幸いにも点滴治療などで回復されたそうですが、非常に危険な状況だったのは確かです」

 エヌセイズには内服薬だけでなく貼付剤、つまり「湿布薬」もある。大谷医師によると、こうした湿布をぜんそく持ちの人が張ると、エヌセイズであるロキソプロフェンやジクロフェナク、イブプロフェンといった成分が皮膚から浸透し、ぜんそく発作を引き起こすことがあるという。

「腰痛で市販の湿布を使用したところ、1~2時間後に『気道が狭くなった』と感じたという50代のぜんそく患者さんがおられました。そのときも電話で相談を受けたので、『すぐに湿布を剥がして来院してください』とお伝えしました。湿布をはがしたことで、受診時にはかなり落ち着きを取り戻していましたが、それでもステロイド薬の投与が必要になりました」

 湿布はドラッグストアで簡単に手に入れられるメジャーな薬だけに、十分に気を付けたいところだ。

かぜなのか、細菌感染なのか

 前出の津島医師が、抗菌剤や抗生物質についても言及する。

「かぜはウイルス感染症が主ですが、かぜの原因ウイルスに効く薬は存在しません。自分の免疫力で治すしかないのです。なかには抗菌剤や抗生物質を出す医師がいるようですが、これは意味がないだけでなく副作用の危険があります。出されても飲むべきではありません。百日咳やマイコプラズマ感染症のような細菌感染には抗菌剤が有効だし、2次感染が疑われる場合は抗菌剤の投与が必要となりますが、これをかぜと混同するのは危険です」

2022.07.06(水)
文=長田昭二