6月12日

ロックダウンはバナナブレッドを焼く

 ロックダウン中、イギリス国民をとりこにしたインドア活動がいくつかありますが、大脚光を浴びたのがベーキングでした。生地をこねて発酵を待ったり、粉やミルクを混ぜてケーキを作ったりすることが、これほど人を幸福にしてくれるとは! 多くのベーキング初心者にとっては新たな発見だったに違いありません。

 中でもみんながこぞって焼いたのがバナナブレッド。もともとイギリスのケーキは材料を混ぜて焼くだけの簡単な物が多いのですが、国民的な果物であるバナナを入れて焼くだけのバナナブレッド作りは初心者に優しく大ブームに。レシピ検索は500パーセントの上昇を見せ、雑誌には著名な料理研究家やシェフたちの自慢のレシピが躍り、SNSでもみんながレシピを共有して大いに盛り上がりました。いったい何本のバナナが消費されたのでしょうか?

7月11日

夏の王様ピムス

  キャッチフレーズは「Anyone for Pimm’s?」。ジンをベースにハーブやスパイス、柑橘類のエキスなどを配合して作られるピムスは、イギリスの夏になくてはならない代表的なカクテルです。ロンググラスにピムスを3分の1ほど注いでレモネードを加え、キュウリやオレンジ、イチゴなど生のフルーツで彩りと香りを添えてミントを散らせば出来上がり。イギリス風のフルーツ・パンチのようなもので、パブでは大きめのジャグに大量に作ってみんなでシェアするのが習わし。タップ(ビールサーバー方式)の仲間入りをしているバーもあります。

 19世紀にロンドンで生まれて以来、独特の香りと風味を作り出すレシピは秘伝のまま。ウィンブルドン・テニスで絶対に欠かせないアイテムでもあります。太陽+パーティー+気のおけない仲間たち、そしてピムス。これが夏のイギリスの幸福のレシピなのです。

2月16日

カツカレーがイギリスの日常食に

 イギリスに住む、特に男性たちを虜にしている日本食……それはカツカレーです! 1990年代初期に創業した「Wagamama(ワガママ)」という日本食チェーンが考案したカツカレーが火付け役となり、20年以上かけてアジア系レストランの定番メニューになっていきました。イギリスではもともと揚げ物を好む風土がある上に、そこに添えられるのは彼らが大好きなカレーソース! しかもおなかが膨れるライス付き。日本のB級グルメがイギリスの定番外食メニューに躍り出たのも不思議ではありません。

 ファストフード店やスーパーの惣菜売り場に入り込み、数ある調理済み食品メニューの仲間入りも果たし、今ではインド料理のチキンティカ・マサラと肩を並べる人気者に。スーパーではパウチ入りのカツカレー・ソースや濃縮タイプの瓶入りペーストなども販売。カツカレーはすっかり日常風景になりました。

江國まゆ(えくに・まゆ)

イギリス情報ウェブマガジン「あぶそる~とロンドン」編集長。東京の出版社で書籍・雑誌の編集を経て、1998年渡英。英系広告代理店にて日本語編集者として活動後、2009年に独立。ライター、ジャーナリストとして各種媒体に寄稿中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)、共著に『ロンドンでしたい100のこと 大好きな街を暮らすように楽しむ旅』(自由国民社)がある。20年以上住んでもなおロンドン愛は続く。

イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日──英国の人たちから学びたい毎日を心地よく過ごすための鍵


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