今年3月、イギリス人の暮らしぶりを多彩なテーマで描き出したエッセイが出版されました。20年以上ロンドンに住む、江國まゆさんの著書『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし365日』です。

 この本から見えてくるのは、アフタヌーン・ティーの習慣などとは一線を画する英国の人たちの飾らない生活。さり気ないユーモア、優しさ、リスペクト。つつましく、そして何よりもフェアであることを心がけて。本の中から、いくつかのトピックをそのまま抜粋してご紹介。今回は「言葉の使い方」にまつわるエッセイです。


6月5日

イギリス人らしい言い回し Class!

 「素晴らしい!」「 カッコいい!」 という意味で使われる俗語が「Class」。もともとアイルランドにルーツを持つ使い方ですが、今は全土で同じような意味合いで使われています。

 ファッションやスタイルが優雅で洗練されている人に対して「She is class!(彼女カッコいいね!)」、 素敵なクラシック・カーを評して「That car was class(素晴らしい車だったねぇ)」、あるいは優れているものに対して「That match was class(すげぇ試合だったな)」など、敬意を感じるニュアンスがあります。若い人の間では、楽しいことや面白いことに対しても使われ始めているようで、ニュアンスとしては「クールだね」という感じ。「Good」よりもカッコよく、「Excellent」よりもカジュアル。ニュアンスを感じながら使いたい単語の一つです。

8月4日

イギリス人らしい言い回し Would you be……?

 イギリス英語は日本語と似ているところがあり、婉曲な表現を日常的に使うのはよく知られていると思います。例えば「◯◯をしてもらえますか?」と言いたいとき。「Can you……?」「Could you……?」は一般的な表現ですが、ちょっと面倒なことを頼みたいときや、クライアントさんに何かをお願いするとき、もう少し遠回しに「Would it be possible for you……?」や「Would you be able to……?」などの回りくどい言い方をよくします。

 ニュアンスとしては「…していただくことはできますでしょうか?」という感じ。相手の立場に立ってモノを考える文化であることがわかるのは、同じく頼み事をするとき、遠回しに「Would you like to……?」「Do you want to……?」という言い方をすることにも表れています。表面的には「……したい?」と言われているようですが、実は「……してよ」とお願いされているのです。

2022.05.23(月)
文・撮影=江國まゆ