9月29日

チージーなお話

 「Cheesy」という言葉は見ておわかりのように、チーズが語源です。本来はチーズを使った料理や、チーズの匂いがする物への形容詞として使われますが、チーズ文化の本場である西洋でチーズがありふれたもの、取るに足りないものというイメージに由来しているのか、「派手な」「安っぽい」という意味のスラングとしても使われます。

 一番よく聞くのは音楽に対する形容詞。よくあるリズム&メロディのポップミュージックや、お涙頂戴的なセンチメンタリズムを刺激するような曲を「Cheesy」と呼びます。この場合、あまりポジティブな意味ではありません。でも、人には「Cheesyだよね?(ちょっと安っぽいよね)」と言いつつも、実は人に隠れてこっそりCheesyな曲を楽しんでいるのもイギリス人。万人に好まれるものを表立ってはよしとしないのが、彼らの本質なのです。

10月4日

イギリス人らしい言い回し Gutted

 「もう本当に残念!」と言いたいとき、ごく一般的な表現が「I’m gutted」。テレビでスポーツ中継の後、負けた選手が「Absolutely gutted!(信じられないほど残念だ!)」などと感想を述べたりするのを見ると、こういうときイギリス人は意外とストレートに感想を言うんだなと思います。ニュアンスとしては「悔しい」も入っていて、他には「I’m devastated(打ちのめされてるよ)」という言い方もします。

 ちなみに日本語の「ガッツがある」と言う表現は、内臓という意味の「Guts」に由来していて、「I needed lots of guts to admit it.(認めるのに勇気が要ったよ)」などという使い方をします。また本能的な感覚に当てはまるのも「Gut」。説明のつかない直感的な感覚を「Gut feeling」と言ったり、「My gut tells me……(俺の直感が……と言ってる)」と言ったり、頭ではなく肚で感じることを指すようです。

10月28日

ジェンダー・ニュートラルって?

 人類が平等意識に目覚めていく過程で、当たり前だと思われていたことも変化していきます。例えば言葉。イギリス人は人類のことを「Mankind」「Human」と言ってきた人々。どちらも「Man(男)」の文字が含まれていて、主に男性が先頭に立って社会を引っ張っていた時代の名残です。

 2010年代に入ってからは、イギリスでもメディアでは「ジェンダー・ニュートラル(性にこだわらない立場)」な言葉を選んで使おうとする傾向があり、「Chairman」は「Chairperson」、「Actress」は「Actor」、「Salesman」は「Salesperson」などと置き換えが進んでいます。そういえば昔ながらの呼びかけ「Ladies and gentlemen!(皆さん!)」もあまり聞かなくなりました。男女平等だけでなくLGBTQ+の存在も、この傾向を加速化。今後もますます社会の進化を反映した言葉選びがなされていくのでしょう。

江國まゆ(えくに・まゆ)

イギリス情報ウェブマガジン「あぶそる~とロンドン」編集長。東京の出版社で書籍・雑誌の編集を経て、1998年渡英。英系広告代理店にて日本語編集者として活動後、2009年に独立。ライター、ジャーナリストとして各種媒体に寄稿中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房)、共著に『ロンドンでしたい100のこと 大好きな街を暮らすように楽しむ旅』(自由国民社)がある。20年以上住んでもなおロンドン愛は続く。

イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日──英国の人たちから学びたい毎日を心地よく過ごすための鍵


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