それを社長の昔からの友人にひょんなきっかけで見せたら、その人物がなんと私の通う中学校の後輩のお父さんだった。それで、2人がベンツに乗ってやってきました(笑) 。

「お宅の娘さんください!」って。 

――そういった熱い現れ方と説得をされると、ほだされて移籍してしまいそうですけど。

 

蘭々 とても悩みましたよ。最初のモデル事務所に0からスカウトしてもらって、ちょっとずつちょっとずつオーディションに受かって、仕事も増えてきたと言う時に移籍って。うちの母とかは情に厚い人で、今の事務所と一緒に大きくなればいいじゃないと反対したりしていたので、余計に悩みました。 

 でも私は現状に不自由さも感じていて、髪型も着る洋服も思考までも管理されるような……ステレオタイプにはまらなきゃいけないような……なんかモヤモヤしたものもあったんですよね。 

 その点、新しいところに移れば、社長は男性のマネージャーしかやってこなかったということだったから女の子のこととかあんまりわからないかもしれないし、それ故に個性を尊重してくれるんじゃないかと思って。 

 でも、いろんな人がいろんなことを言ってくるからなかなか決められなくて、最終的に高校の体育館で鉛筆占いで決めました(笑)。移るか移らないか、転がしたら「移る」って。 

お給料が月20万円に

――1993年、17歳で新しい事務所に移られた。所属していたのは、蘭々さんだけですか。

蘭々 はい。社長と二人三脚でした。オフィスもなくて、社長の自宅の電話一本のみ。再び何もない状況からスタートする感じでした。 

  社長は独立するにあたって大事なベンツを売ったと言っていました。でもハンドルだけは手元に残したと(笑)。 頑張ってもう一回ベンツに乗るぞって宣言していました。

 私にお給料も払わなくちゃいけないし、なるべく無駄なお金を使わないということで、オフィスも持たず、電話一本だったのかな……。 

2022.05.18(水)
文=平田裕介