化粧品は市場に溢れている。じつは家にも溢れている。だからもうこれ以上はいらないと、毎年のように毎月のように思うのに、それでもなお欲しくなる化粧品がある――美容ジャーナリストとして第一線を走り続ける齋藤 薫さんにそう言わしめるのは、一体どんなコスメ?


ファンデの王道タイプに異変?

 一過性のトレンドに終わるかと思いきや、クッションファンデはすっかり“王道タイプ”の1つに格上げされた。逆に永遠の“王道”と思われたリキッド、クリーム、パウダータイプの3つが、なんだか急に分が悪くなり、進化を余儀なくされている。

 でもこれがそう簡単なことではなく、王道タイプはそれぞれ成熟しきっていて、もうこれ以上どうやって進化すればいいのか、悶々としている状況が続いたのだ。

 とりわけリキッドタイプは、ファンデーションの原型とも言えるシンプルなものだけに、限りなく完成形に近いものも生まれていて、もうこれ以上は進化させられない、といったレベルまで来ていた。だからまさかこんな展開になるとは!

 今期、ともかくそのリキッドファンデが凄いことになっている。

 何年も足踏み状態で、もはや限界と思われていたのに、突然のように劇的進化を遂げたのだ。ほとんど革命的とも言っていいほどの。例えて言えば、糖質ゼロのビールが異様に美味しくなったり、体に良くてダイエットができる食用油が生まれたり、そうした飽くなき研究による大逆転にも匹敵する衝撃があるのだ。

悪者だった乳化剤が、毛穴を小さくする肌改善効果を持った!?

マキアージュ「ドラマティックエッセンスリキッド」

 まず何と言っても、リキッドファンデーションの意味を変えてしまうほどの革命を起こしたのが資生堂マキアージュ。塗り続けるほどに肌がどんどんキレイになる肌質改善リキッドとなったのだ。

 しかも歴史的に「ファンデは肌に悪い」というイメージを作ってきた張本人、「乳化剤」自体が肌を改善するという、大逆転の乳化技術を搭載。これが保湿成分を密封し、肌の中まで押し込んで、毛穴の奥まで潤すから、つけ続けるうちに開いた毛穴が引き締まってくるのだ。

 しかも均一フルカバーで欠点が全く見えない仕上がり。マキアージュは若い人のもの、そう思っていたら大人肌は損をする。

 もちろん今時は、肌に悪い石油系の乳化剤などを使う液状ファンデーションは見当たらないが、まさか肌を改善するスキンケア乳化剤が生まれるなんて、誰が想像しただろう。ともかく資生堂の乳化技術は日本一、どころか世界を圧倒すること思い知らせる逸品なのだ。

2022.04.30(土)
文=齋藤 薫