食欲に振り回される生活はストレスが多く、自分への自信まで失ってしまいがち。

 毎日を快適に生きるために「ちょうどよい体」を維持する食べ方を考えよう。


 「食べちゃダメ」と思うほどに食べたくなるのはなぜ? 長年付き合ってきているはずなのに、なにゆえ食欲のコントロールはこれほどまでに難しいのだろうか。

 その疑問に答えてくれるのは、管理栄養士の岸村康代さん。中学1年のとき、興味本位で始めたりんごダイエットをきっかけに、15年にわたって食欲コントロールに苦しんだ経験の持ち主だ。

「実は、食べちゃダメと思う気持ちが、食欲のスイッチをオンにしてしまうんです。食べたいのを我慢するのも、食べ過ぎて後悔するのも、人にとっては同じようにストレスです。ストレスを感じると食欲を促すドーパミンの分泌が過剰になり、さらに食べたい欲求が強まります。そうなると、食欲のコントロールなんてとても無理」

 けれど、好きに食べていたら体調を崩しそうだし、美容面への影響だって心配だ。

「食べ方のコツを身につけて、体を必要な栄養素で満たせば、食欲のコントロールは難しくありません。それどころか、甘いものが食べたい、何か物足りないといった偽の食欲に惑わされることがなく、体調も整うので毎日が快適です」

満腹感も空腹感も血糖値が決めている!?

食欲コントロールを容易にする食べ方のコツとは?

「実は、満腹感も空腹感も、鍵を握るのは血糖値です。血糖値を制する者が食欲を制すということ。ご存じのように、血糖値は糖質が消化吸収されてブドウ糖になり、血中に流れ出たときの濃度のこと。血糖値が上がると脳は満腹と判断し、インスリンを分泌して血中のブドウ糖を細胞に取り込みます。すると血糖値が下がり、今度は空腹モードに切り替わる仕組みです」

 最大のポイントは、血糖値の上がり方と下がり方をいかに緩やかにできるかだという。

「血糖値の上げ下げはセットなので、急上昇すれば急降下して空腹感も強まり食欲スイッチがオン、抗えない欲求となって私たちを苦しめます。負のループを断ち切るには、特に空腹時に糖質を単体で摂らないことが絶対条件です」

 ここで覚えておきたいのは、ひと口に糖質と言っても、血糖値を急上昇させる「NGな糖」と、体にダメージを与えにくい「OKな糖」があるということ。

 「果糖ブドウ糖液糖が、NGな糖の代表格です。加工された糖である果糖ブドウ糖液糖は、消化のステップがなく腸で素早く吸収され、血糖値を急上昇させます。ジュース、炭酸飲料、菓子類、ドレッシングに使われていることもあるので、原材料名を確認するクセをつけましょう。

 OKな糖は、野菜や果物です。かぼちゃなどは糖質が高いと避ける方も多いですが、糖質のほかに食物繊維やビタミンが含まれていて消化吸収に時間がかかるので、NGな糖のように血糖値が急カーブを描いて上がることはありません」

 空腹時にいきなりNGな糖の入ったドリンクを飲んだり、菓子パンなど糖質を多く含む食べ物を単品で食べることは避けたい。

 「ベジファーストが推奨される理由は、胃の中が野菜で“かさ上げ”されるだけでなく、食物繊維があとから食べる糖質の消化吸収を緩やかにしてくれるから。この考え方に倣い、糖質の多いものを食べるときは食物繊維などを一緒に摂ることを心がけましょう。

 野菜が準備できないときは、トマトベースの野菜ジュースやミネストローネスープもいいですし、ヨーグルト、豆乳、ゆで卵などコンビニでも手に入る食材でたんぱく質から食べ始めるのもおすすめです」

2022.05.08(日)
Text=Yuki Imatomi
Illustrations=Ayaka Maruyama

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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