“手ばかり”メニューで食欲を自分の管理下に置く
糖質制限のブームにより、糖質の摂取に抵抗を覚える人も少なくないはず。岸村さんは極端な糖質制限には賛同できないという。
「糖質の摂取量が極端に少ないと、満腹感が脳に伝わらず食べ過ぎを招いたり、糖質制限が体質に合わず、集中力がなくなった、風邪をひきやすくなったなどの声もあります。糖質はエネルギー産生栄養素の一つですし、極端に制限するのはあまりおすすめできません」
食欲を落ち着かせるためには、安定して食べ物が体に入ってくる状態が望ましいのだという。
「最近、PFCバランスを推奨する声をよく聞きます。エネルギー産生栄養素のP(たんぱく質)F(脂質)C(炭水化物)を、女性なら一食当たりP=13~20%、F=20~30%、C=50~60%にしようという、栄養学の基礎に則った理想的な食事バランスです。
でも、計算しながら食事を用意するのは大変ですよね。そこで私は、以前から“手ばかり”を目安にした方法をおすすめしています。毎食、たんぱく質は片手のひら1枚分、野菜は生なら両手のひら1杯分、お茶碗に軽く1杯の糖質。この基本の食べ方で栄養バランスが整い、数日とかからず食欲スイッチは自然とオフになります」
手ばかりによる基本の食べ方は変えずに、目的に合わせてその質と量を調整することが、ベストな体調や体型を維持していく近道だ。
「体重を減らしたいときは、脂身の少ないヒレ肉を選んだり鶏肉の皮を外したりの工夫でカロリーダウンをしましょう。体重維持の場合でも、活動量の少ない日は白米を3口分減らす程度の心がけで体重の調整が容易になります」
もし食べ過ぎたら、“野菜のシャワー”で早めにリセットを。
「食べ過ぎた余剰分は肝臓などで一定量が貯蔵され、許容量を超えると脂肪になります。ですから脂肪になる前にリセットすれば、体はノーダメージ。食べ過ぎたら翌日以降、なるべく早いタイミングで野菜をシャワーを浴びるようにたっぷり食べて余剰分を調整しましょう。私は自他ともに認める食いしん坊ですが、この方法で10年以上、体重をキープしています」
「食べ方」と「食欲」の真実
1.「偽の食欲」に騙される人が多い
空腹を覚えたら水を1杯。これで収まるなら偽の食欲なので、食べるのはまだ早い。
2.糖質の多い食事を食べれば食べるほど「偽の食欲」が湧く
糖質を摂ると血糖値が上がり、下がったタイミングでまた何か食べたくなってしまう。
3.OKな糖質とNGな糖質がある
加工された糖は吸収が早いNGな糖。食物繊維なども摂れる野菜や果物はOKな糖。
4.体が欲する食べ方にすれば、本来のあるべき体になる
体が必要な栄養素で満たされるバランスのよい食べ方で正しい食欲が戻り、体調も体型も自然と整う。
5.食欲スイッチはオフできる
食欲コントロールは意志ではなく、食べ方と食べ物の選び方でスイッチオフできる。
6.食べる量を減らせばやせるというわけではない
摂取した食べ物をエネルギーに変える栄養素が足りていなければ、やせられない。
7.食べ過ぎても、大量の野菜でリセットすれば大丈夫!
食べ過ぎを後悔する前に、たっぷりの野菜を食べて余った糖質や脂肪を体外へ排出。
●お話を聞いたのは……
岸村康代さん
管理栄養士。大人のダイエット研究所代表理事。管理栄養士/野菜ソムリエ上級プロ。自身も13歳の頃の間違ったダイエットでリバウンドを繰り返した体験があるが、その後15kgの減量に成功。メタボ指導の現場で10~20kgの健康的に行うダイエットサポートをしてきた経験を含め、これまでに落とした脂肪は合計10トン以上!
Column
私たちの体を守りケアする
フェム・ヘルス研究室
女性の心身の仕組みを理解して、快適に暮らすめための連載。「フェムテック」アイテムの紹介をはじめ、PMS、月経、更年期などの女性のしんどさを和らげて、生活の質を上げる方法を考えます。
2022.05.08(日)
Text=Yuki Imatomi
Illustrations=Ayaka Maruyama