恩師の遺志を引き継ぐ決心

――初主演作としての撮影現場の雰囲気、監督としての塩屋氏との作品作りはいかがでしたか?

 主演作といっても、共演に財津一郎さんがいらっしゃるのでおこがましいですね(笑)。だから、主演という気負いはなくて、僕は僕の役として現場にいた方がいいと思っていました。それにどんな現場でも、最初は監督の好みの芝居と自分の好みの芝居を擦り合わせていく作業から始まるんです。こっちの方がいいんだと、だんだん分かっていくんですが、塩屋監督は僕に芝居を一から教えてくれた人。つまり、僕がやる芝居は彼の好みの芝居なんですよ。たとえば、朝起きる芝居があったら一時間前から本当に寝かしてくれて、そのリアル感にこだわる人。だから、リラックスして演じることができましたね。

――そんな塩屋氏は、今年の6月にこの世を去ってしまいましたが、それについてはどのように捉えていますか?

 本当に悲しいことですけれど、僕は彼の遺志を引き継ぐ者だと思っています。彼は役者として海外に出たかった人ですし、役者を辞めてからも自分の夢を叶えてくれる役者を育てたいという気持ちが強かった。それは十分に僕にも伝わっているので、最低でもその夢を叶えなきゃいけない。語学(英検1級取得)や体格に関しては、自分にとってのアドバンテージだと思います。向こうの役者と体格的にも張り合えることは、とても大事だと思っていますから。もっと経験を積んで、世界に通用する日本人の役者がいっぱいいるんだぞ、ということを広く伝えていければと思っています。

鈴木亮平(すずきりょうへい)
1983年3月29日生まれ。兵庫県出身。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒業。2006年、史上初の東レ水着キャンペーンボーイに選ばれる。演技学校アクターズクリニックで演技を学び、06年にドラマ『レガッタ~君といた永遠~』で俳優デビュー。翌07年『椿三十郎』で映画デビュー。俳優として、数々の映画・ドラマ・舞台で活躍するほか、現在エンタメ番組「FOX BACKSTAGE PASS」(Foxチャンネル)では司会を務める。

『ガッチャマン』
21世紀初頭。謎の侵略者によって、17日間で地球の半分が壊滅的な被害を受ける。侵略者から地球を守るため、“石”という特殊な結晶体の力を引き出せる適合者が集結。施設に集められた適合者(松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽、濱田龍臣、鈴木亮平)は特殊エージェントとしての訓練を受けて、石を操る忍者ガッチャマンとして侵略者と戦うことになる。
www.gatchaman-movie.jp
(C) タツノコプロ/2013 映画「ガッチャマン」製作委員会
2013年8月24日、全国東宝系にてロードショー

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2013.08.16(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Hirofumi Kamaya