ストッキングをはじめとしたレッグウェアのパイオニアとして、常に業界をリードしてきたアツギ。

 70年を超えるアツギの歴史の中でも、絶大な人気を誇るストッキングブランドが「ASTIGU(以下、アスティーグ)」だ。そのアスティーグがこの春、「はきかえよう、自由を。」という新しいブランドコンセプトとともに全面リニューアルされた。

 6者6様のモデルが起用されたキャンペーンクリエイティブは、新しい今の時代の美しさを讃えているかのよう。ストッキング業界を牽引してきたブランドをリブランディングしたきっかけや、発売までの経緯を聞いた。

一人ひとりに美と快適さをもたらすストッキングを実現したい

 2011年にアツギから誕生したアスティーグ。美意識やその日の気分、その日のファッションで選べるバリエーションで、多くの消費者に支持されてきたプレーンパンティストッキングのブランドだ。

 今回のリブランディングは、アスティーグにとってデビュー以来、初となる試み。その背景には、世の中の女性が考える“美の概念”の変化があるという。

 「2011年当時は、マナーや仕事、冠婚葬祭で穿くことの他に、『他の人に脚をきれいに見せたい』という目的で、ストッキングを選ぶ方が多い傾向にありました。

 しかし、2021年頃に行った調査では、『他の人にどう思われるかではなく、自分が美しいと感じるかどうか、いかに快適に穿けるかどうか』に重きを置かれる方が非常に多いという結果が出たんです。女性の意識が大きく変わってきているということがわかりました」(加藤さん)

 世の中の変化を受け、アツギ社内ではリブランディングのプロジェクトが立ち上がった。加藤さんはその開発担当者として携わることに。

「アスティーグを再開発するのであれば、『ストッキングを穿いて美しくなりたい、快適に過ごしたい』という一人ひとりの女性の気持ちに寄り添うブランディングをしたい、と考えました」

 美の固定観念からの脱却を提案する新アスティーグのコンセプト「はきかえよう、自由を。」には加藤さんのそんな思いが込められている。

―はきかえよう、自由を。―

常識を脱ごう。
しばりつけるものは、もういない。
はきたいときに、はきたいものを、誰もが選べる。
いつはいてもいい、どんなスタイルに合わせてもいい。
ストッキングは、あなたのひとつの可能性。
さあ、自由をはきかえよう。

「人からどう見られるかではなく、自分の感じ方、心地よさが大事だよね。美の固定観念から女性を解放して、それぞれの美しさを尊重するコンセプトがいいんじゃないか、という意見で一致し、それを叶える商品を練り上げていくことに決めました」

 このコンセプトが実際に消費者の考えと一致するものなのかどうか、18歳から69歳の女性600人に、「世の中の美の多様性と自身の容姿に関する意識調査」を実施。

 「約7割の方が、『昔は、典型的な美しい人物像があったけれど、今は美が多様化していて、こんな人もあんな人も皆すてきじゃない?』という回答でした。

 でも、その一方で、自分自身の容姿に寛容になれていますかと聞くと、半分以下の人しか自分を肯定できていないんですよね。結局、自分ごとになると固定観念に縛られてしまっている。調査では、自分にとっての美しさを見出して、自分を肯定できている人は人生の満足度が高いことも同時にわかりました。

 固定観念から自由になることを応援していく、私たちが決めた新しいコンセプトは間違っていないと改めて感じました」

2022.02.21(月)
文=佐藤由樹
写真=平松市聖