それから数カ月経ったある日、編集者が和田さんのカバーイラストと装丁を見せてくれた。

マネのマネというシャレたジョーク

 今までどんだけ和田タッチをマネてきたことか。いや、どんだけマネたつもりでもその差は歴然だった。しかも、カバー裏には僕がよく描くカエルのイラスト。しばらく自分でも気付かなかったくらいソックリだった。

 それはきっと、和田さんのマネのマネというシャレたジョークだったに違いない。あぁ、そんなカッコイイ大人にどうしたら成れるのか?

 常々、思ってきたが、今回、その糸口になるであろう単行本が出た。和田さんの17歳から19歳の日記帳である。先ず、表紙に書かれた当時の『だいありぃ』という袋文字に釘付け。

“袋文字とは文字修飾の一種で、輪郭線だけがある文字”なのだが、僕はそれをずっと和田文字と呼んでいる。もう、この頃から完成型ではないか!

 和田さんがその時代に『お楽しみはこれからだ』の礎となる映画を存分に観られてたことや、観察眼にブレが無いことなど、リアルな手書き文字で知ることが出来、僕は大きなため息をつきながら天才のマネは無謀だったことに改めて気付かされた。

 やっぱスゴ過ぎ!

INFORMATION

◆11月3日からはギャラリー「TOBICHI」(東京千代田区)にて10代の頃の日記を題材とした「だいありぃ 和田誠の日記展」も開催。

◆和田誠さんの17~19歳の日記を手書きのまま書籍にまとめた『だいありぃ』が現在発売中。

◆和田誠さんの仕事の全貌に迫る「和田誠展」が、東京オペラシティアートギャラリー(東京新宿区)にて開催中。会期は12月19日まで。

◆和田誠さんがマザーグースを訳した詩集に、作曲家・櫻井順さんが曲をつけた、120組による全120曲が収録された名盤「オフ・オフ・マザー・グース」が今秋復刻。展覧会ミュージアムショップのほか、全国のCDショップやオンラインで販売中。

2021.11.10(水)