和田誠さんが2年前に旅立ったあと、事務所から発見された6冊のノート。それは和田誠さんが青春時代に記した1953年から1956年の日記帳でした――。
平野レミさん、横尾忠則さん、みうらじゅんさんの3人が、和田誠さんの日記を読みながら、その思い出を語ります。
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平野レミさん「高校生の和田さんと、今になって出会えるなんて」
「和田さんの日記が見つかりました」と事務所から電話があったのは去年の秋のことです。
息子には「日記なんか読んじゃダメだよ!」なんて止められたけど、どうしても気になっちゃって。「和田さんゴメン! 読ませてお願い!」と手を合わせて、ドキドキしながら読んでみました。
17歳から19歳の日記ですから、血気盛んな青春まっさかり。きっといやらしいことも書いてるだろうと思っていたら、読まれてまずいことなんて一個もない! 書かれていたのは、映画と音楽、イラストレーションに明け暮れるキラキラした和田さんの青春でした。
嬉しかったのは17歳の和田さんが、私の知っている和田さんと何も変わっていなかったことです。アル・ジョルスンのレコードを集めて、ジェイムス・ステュアートにファンレターを出して、袋文字もこの時から描いている。
皆さんもよく知る和田さんは、この頃すでに出来上がっていたんですね。私が出会う前の和田さんと、今こうして知り合うことができたのはとっても得した気分。
さらに驚いたのは、試験期間中に3日連続で映画を見ていること。息子も明日から期末試験という時、1日中御茶ノ水でギターを見ていたんです。夜になってやっと帰ってきたと思ったら制服のまま古いギターを抱えて寝ちゃってる!
高校生の和田さんもまったく同じ
これはまずいと思って和田さんに言ったら「これでいいんだ」って。おっかしいわよね、その時は「な~に言ってるのよ」と思っていたけど、高校生の和田さんもまったく同じなんだもん。好きなことをどんどん突き詰めて、どんどん勉強が出来なくなって……(笑)。
2021.11.10(水)