そこで思い出すのが、アメリカのサイエンスライター、エマ・マリスの『「自然」という幻想』。要するに、「手つかずの自然」幻想をやめ、都市部にもある小さな自然を大切にすることから環境保全を考え直そうという提案だ。TED(最新の知見を共有する世界的な講演会)での彼女のプレゼンテーションは、おそらく西洋の自然観にとってはコロンブスの卵とでもいうべき斬新な発想だったはずだ。
いわゆるSDGs 的な課題(図)が西洋発祥の近代合理主義的なマインドセットから生まれたものであるとするならば、これらを解決するにはそれと異なるマインドセットを構築する必要がある。それを可能にするヒントが日本的「森のようちえん」すなわち「里山のようちえん」にあるような気がする。
人類の活動が地球に地質学的な意味での爪痕を残している状況を最近では「人新世」ともいうが、人新世の危機を脱するのに必要なのは、SDGs でもマルクスでもなく、「MORI NO YOCHIEN」「SATOYAMA YOCHIEN」かもしれない。
2021.11.05(金)
文=おおた としまさ