子どもの成長に合わせて親の暮らしは目まぐるしく変化する。仕事、家事と毎日の生活に追われ、育児について多くの悩みを抱える人も少なくないだろう。「子どもが宿題をしない」「スマートフォンばかり見ている」「家の手伝いをまったくしない」……。そのように子育てについての指針に悩んだときには、先達の経験に頼るのも一つの手だ。

 ここでは、スティーブ・ジョブズ親子の授業を担当し、現在YouTubeでCEOを務める娘を育て上げたアメリカ教育界のスーパースター、エスター・ウォジスキー氏の著書『TRICK スティーブ・ジョブズを教えYouTube CEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法』(文藝春秋)を引用し、型破りでユニークな教育法を紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

◆◆◆

興味のないことは無理してやらせない

 違いを認めることは、すべての基本になる。

 孫のジェイコブは音楽の才能があり作曲もする。高校の最上級生のとき、「ワンズ・アンド・ゼロズ」という素晴らしいミュージカルを上演した。ジェイコブが音楽と脚本を担当し、演出も演技も手がけた。

 だが、ジェイコブの兄弟も音楽好きというわけではない。妹のアメリアは楽器は演奏できないが、何年もダンスをやっていた。弟のレオンはチェスの名人で、レゴもうまいしゴルフが大好きだ。下のふたり、エマとアバはバレエに夢中だ。この世界にはやることがたくさんある。

 もうひとつ、大切なことがある。何かをやり続けることは大切だが、子どもの興味が変わったらそれを認めたほうがいい。

 習い事が嫌になってきたら、休みを取って見直してみるといい。子どもがそれでもやめたがっていたら、ほかの何かを探させるのもいい。

 孫娘のアメリアは素晴らしいダンサーで、何年にもわたって全国大会で優勝していた。放課後に何時間も練習を続け、チームの一員として国中を旅した。そのアメリアが昨年、ダンスをやめてサッカーに集中したいと言いだした。親はシーズンが終わるまでは続けたほうがいいと励ました。シーズン途中で投げ出してはいけないと教えることも大切だった(それが人格形成にも役立つ)。だが、本人が本当にやりたいことは何かを、親は訊ねた。アメリアは、シーズンが終わるとダンスをやめた。せっかくここまでやったのだから(お金もたくさんかかったのだから)と強制的にダンスを続けさせる親もいるかもしれない。それでプロのダンサーになれたかもしれない。でも、そうなったとして、いったい誰の人生だろう? それで自立したことになるだろうか? 幸せだろうか?

2021.04.19(月)
文=エスター・ウォジスキー