──いまお名前が出た水谷さんのほかにも、初代の友蔵役の富山敬さん、2代目の青野武さん、最近ではナレーションのキートン山田さんもそうですが、30年の間にキャストさんの交代も何度かありました。いまは、放送開始当初の『ちびまる子ちゃん』に馴染みのないスタッフさんもいるのではないかと思いますが、アニメの作風や現場に変化は感じますか。

TARAKO 声優さんもそうですし、監督さんや編集さんもこれまで何度か変わってきたんですけど、音響監督さんがずっと同じ方なんですよ。その方がまる子のことをよくわかっていて、一貫した作品の世界を作ってくださっています。だからその方の判断にすべてお任せしてるんですが、ももこちゃんが書いていないお話の場合、あんまりまる子っぽくないなって思うことは、はっきり言っていっぱいあります。でもそれは絶対否定しないようにしてるんです。長く続いているからこそ頑固になっちゃいけないと思っていて、「こういうまる子もあるよね」って私たちのほうから歩み寄らなきゃって。

──さくらさんの『ちびまる子ちゃん』とアニメ版はまたすこし別の作品、という感覚ですか?

TARAKO そうですね、別物。原作ってすっごくシュールじゃないですか。ももこちゃんが描いていた『ちびしかくちゃん』とかも、本当にひねくれてる。ももこちゃんは本来、そういうのがチャーミングなんだよっていうのを伝えたかったんじゃないかと思うんですよ。いい子、やさしい子、美しい子じゃなくても、こういう子もかわいくておもしろいんだよっていうのを知っていた方だと思う。

 だから脚本がどんなふうに変わっていっても、それに柔軟に合わせていきたいけど、ももこちゃんのその「色」だけは役者が持ち続けてないといけないって思ってます。役者が思いを持っていれば、台詞は一言一句変えなくても、役に宿る心は変えられるので。それだけはいつも心がけてます。こんなに長く続いているのも、収録に行けば変わらずみんなに会えることも、本当に幸せな作品。『ちびまる子ちゃん』はホームですね、やっぱり。

2021.07.11(日)
文=生湯葉 シホ