あと、まるちゃんがあれだけヒットしたおかげで、逆に「まる子じゃない声でお願いします」ってオファーを頂くことも増えた。まるちゃんを求められることも、そうじゃない声を求められることも出てきて、いまはどっちもうれしいと思えますね。最近はもう「つくろう」とか思わずに、できるだけ素のまんまでやろうって心がけてます。いまってコロナの影響でスタジオに入れる人数が限られているので、声優は前もって個別に脚本とDVDを頂いて、それをチェックした上で本番という流れなんですけど、私はホンもDVDも絶対もらわないようにしてるんです。

──えっ、じゃあ、演じるタイミングになるまでその日のストーリーは知らないんですか?

TARAKO そうなんですよ。収録のテストで初めて読んで、そのまま本番です。先に読むと自分が「つくって」きちゃうから、嫌なんですよね。もちろん原作のお話はなんとなく覚えてますけど、アニメオリジナルのお話は、「え~っ、こんな終わり方するんだ」ってやりながら驚いてます。他の声優さんに言うとおかしいって言われますけどね(笑)。「いきなりやって、口パクにうまく声合わせられるの?」って聞かれるんですけど、「まる子だったらたぶんこのへんで言い終わるな」ってわかるんですよ、30年やってると。

 

個人的には「まる子 子ねこをひろう」っていう回がすごく好き

──30年選手のTARAKOさんならではのエピソードですね……。これまでまる子を演じられてきたなかで、特に印象に残っているお話ってありますか。

TARAKO 映画だったら、『わたしの好きな歌』かなあ。お話もですけど音楽とかアングルもいちいち格好よくて、ももこちゃん色が思いきり出ていて、大好きです。アニメは、たっくさんあるんですけど、個人的には『まる子 子ねこをひろう』っていう回がすごく好きで、あのお話には泣く演技を教えてもらいました。『たまちゃん大好き』とか『まるちゃん 南の島へ行く』も好きだなあ。あと、まるちゃんが野良犬に追っかけられて、それをお姉ちゃんが追い払ってくれるお話があるんですけど、それはお姉ちゃん役の水谷優子ちゃんの芝居が大好きで……ああ、まる子のこと語り出すとキリなくなっちゃう。

2021.07.11(日)
文=生湯葉 シホ