化粧品は、留まることなく進化を続けている。

 美容ジャーナリストの齋藤 薫が、独自性を極めたもの、また過剰なほどの技術や情熱を注ぎこんで完成した化粧品を「職人技」、「職人芸」という視点から語る。


“白”と決別する職人技

 昨年、欧米から突如やってきたのが「美白は、差別的」という見解。BLM(黒人差別撤廃への運動)が世界に広がる中、ところで肌を白くするというホワイトニングという考え方はどうなんだ? というふうに、矛先が美白化粧品に向かい、海外ではいくつかのブランドが美白化粧品の販売を中止するという事態にまで至った。

 美白という言葉を生み、その主戦場ともなった日本の美白界は一体どう対処するのか? に注目が集まったが、昨年ひとまずは様子見という態勢をとる。しかし2021年の美白シーズン、蓋を開ければ、明確に「美白」という言葉を使用しないというきっぱりした行動に出たのは、結局のところ「花王」だけとなり、花王・カネボウの美白該当製品はいずれも「ブライトニング」を名乗っている。

 例えばトワニーは、光をコントロールして透き通る“水面肌”を叶えるブライトニング美容液を発表、このジャンルのドラマチックな未来を示唆した。ただ奇しくも「白くなること」そのものをアピールする新美白は他社にもほぼ見当たらず、様々な方向に広がりを見せた結果、ある意味「白と決別するシーズン」になったと言っていい。

 今年最大の評価を受けたのは、肌色の濁りの原因を多角的に突き止めて、一斉に取り払っていくというポーラの美白美容液。明らかに白さ自体を追求するものではない。美白の王道を歩いてきた資生堂HAKUも、レーザーのシミ治療がリバウンドしてしまう事実をクローズアップ。

 美容医療か? 化粧品の美白美容液か? という二者択一を掲げて、消えないシミ、ぶり返すシミにアプローチしていくものとなった。ロート製薬のエピステームも、美容医療のフォトフェイシャルを人工皮膚で徹底的に研究し、そのデータを化粧品に応用している。またオルビスの美白は、画素数の高い写真がそれだけで明るく見えることをヒントにピクセル美白を提唱した。

 ちなみに日本の美白は最初から、ターゲットはシミ。ムラのない均一な肌を目指してきたわけで、そもそも肌色の差別などあり得ない話。今後も美しい肌の追求として、日本の美白は休むことなく進化していくのだろう。白さに固執しない美白の新しい未来へ向けて。

ロート製薬 エピステームコール

電話番号 03-5442-6008
https://www.episteme-net.jp/


ポーラ

フリーダイヤル 0120-117111
https://www.pola.co.jp/brand/whiteshot/


カネボウ化粧品(トワニー)

フリーダイヤル 0120-108281
https://www.kanebo-cosmetics.jp/twany/


資生堂

フリーダイヤル 0120-81-4710
https://www.shiseido.co.jp/haku/


オルビス

フリーダイヤル 0120-010-010
https://www.orbis.co.jp/

2021.06.25(金)
文=齋藤薫
Photographs=Hirofumi Kamaya

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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