ホテルってこうだよなぁとあらためて思う。いま造れと言われてもきっとできない、年月を経てきた年輪のような魅力が「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」にはある。決して奇をてらわない懐の深さがあり、疲れない、気を張らなくてよいホテルだ。

「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」のディナーといえば、ふだんは和食派の私でも、断然フレンチの「メインダイニング ル・トリアノン」を選ぶ。何メートルあるんだろうという吹き抜けは荘厳そのもの。芦ノ湖を望む大きなガラス窓も圧巻。夕刻の湖面から漆黒の湖へと変化する時間の移ろいもダイニングのエッセンスだ。魚介のマリネ、真鯛の白ワイン蒸し、牛フィレというフレンチの王道のようなコースはまさに“プリンスホテル”のイメージ。一方、見たことのないワインがペアリングされるという計算された異端ぶりにはワクワクさせられる。

 

箱根仙石原プリンスホテル(神奈川県箱根町)

「Tresor(トレゾール)」の「穴子の白焼きと箱根西麓トマトのガスパチョ仕立て」
https://www.princehotels.co.jp/hakone-sengokuhara/plan/platdujour/tresor/

 箱根のプリンスホテルといえばもう一軒紹介したいホテルと料理がある。「箱根仙石原プリンスホテル」は目の前に広がるゴルフ場の風景が印象的なリゾートホテル。落ち着いた時間が流れていて、多くのリピーターに愛されているのもうなずける。

 ホテルダイニングといえば和食・洋食・中国料理と様々であるが、洋も和も愉しみたいという欲張りな面々に嬉しいのが和洋折衷。トレゾールとはフランス語で「宝物」の意であるが、和食と洋食の料理長が紡ぎだす和洋折衷の一皿一皿はやはり宝物といえる。オードブルの穴子の白焼きと箱根西麓トマトのガスパチョ仕立て。穴子はしっかりした食感で、コクのあるガスパチョとのバランスが絶妙だ。

2021.05.13(木)
文=瀧澤信秋