つらい仕事を通して気づいたこと

――以前はつらいと感じる仕事もあったのですね?

 この現場は毎回たいへんだな、というのは正直ありましたよ。若い芸人なんて無理が利いてこそという面ってあるじゃないですか。テレビ番組のロケで1日20軒くらい飲食店回るとか、パネラーの方が全員大先輩なのに自分がMCとして番組回さないといけないとか。

 それでも最初は健気にね、これを乗り越えてスキルつけて、ゆくゆくはゴールデンタイムの人気番組でどっしりとした司会をやれる大物芸人にならねば! とがんばりましたよ。

 

 でも、うまくいかないものはうまくいかないし、もしそういう目標を実現できたとしても、自分がつらい思いをしているようでは意味がないといつしか気づいたんですよね。

 芸能界の王道で活躍できている人は、つまり適性があったということでしょう。その人にとっては、最も華やかな場でスポットライトを浴びるのが楽しいだろうし、そこへ向けてむりなく努力できるんですよ、きっと。

 僕はといえば、違う方向でがんばっていきたいと、自然に考えるようになっていった。「ゴールデンタイムの番組MC」という成功モデルに囚われ過ぎなくてもいいや、と途中から思えたということです。

僕はとことん「競わない」というポジションが楽

――競争から降りると、「あいつは負けた」と思われそうで、悔しくはないですか?

 ないです、ないです。僕から見て、すごいなと思う人は素直にすごいなと思うし、敵わないなと思ってしまう。お笑いの世界だったらいま、EXITのふたりの勢いがすごいじゃないですか。彼らと「チャラ男」キャラで競おうとしたって、ぜんぜん敵わないですしね。僕がひと昔前にやっていたのとは別のかたちで、チャラいキャラの新たなスタンダードを彼らがしっかりと打ち立てている。それに対抗しようとは思わないです。

 僕はとことん「競わない」というポジションが楽なんです。

 
 

2021.03.10(水)
文=山内宏泰